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【レポート】アルゼンチンの酪農事情

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最終更新日:2016年7月19日

 アルゼンチン共和国(以下「アルゼンチン」という)は、日本の7・5倍の広大な国土(27万8000km2)を有し、ラプラタ川水系で最も大きな支流であるパラナ川の恵みを受けた肥沃な平原(パンパ地域)では、温暖湿潤の恵まれた気候帯も相まって酪農を含む農畜産業が盛んに行われています。
アルゼンチン4

肥沃な土壌で放牧酪農

ガウチョ
 酪農生産は、パンパ地域を中心に行われ、コルドバ州、サンタフェ州、ブエノスアイレス州の3州で国内生乳生産量の約9割が生産されています。主に、肥沃な土壌を生かした放牧による飼育が中心ですが、土地が広大であるため、牧場の管理にはマンパワーが必要となります。特に、牧草地の乳牛を搾乳場に誘導する作業には時間を要しますが、その際に活躍するのが「ガウチョ(日本語に訳すと“牧童・カウボーイ”)」です。彼らは馬を自在に乗りこなし、乳牛に極力ストレスを与えない方法で誘導して昼夜2回の搾乳作業を円滑に進めます。

牛乳・乳製品の消費量は日本の2倍以上

アルゼンチンの食卓には、チーズを筆頭に牛乳・乳製品が日常的に多く並びます。イタリアなどヨーロッパからの移民が多く、チーズなどの乳製品は伝統的に多く消費されており、牛肉と並んで欠かすことのできない食材です。
 このため、同国は世界でも有数の乳製品消費国に数えられ、1人当たりの牛乳・乳製品年間消費量(2014年)は198L(生乳換算)と日本の約2・2倍となっています。近年は、諸外国と同様に健康志向の高まりを反映し、カルシウムを強化した機能性乳飲料などの商品も増えています。また、日本ではあまり見かけない「ドゥルセ・デ・レチェ」という半液状のミルクキャラメルが人気の高い乳製品であり、ジャムとしてパンやシフォンケーキに塗ったりして日常的にたくさん食べられています。
コーヒーとピザ

低迷期からの脱却に期待

インフレ率
首都ブエノスアイレスは、かつて「南米のパリ」と呼ばれ隆盛を誇りましたが、近年は政府による農畜産物の国内優先供給政策により、主要輸出産品であった農畜産物の輸出が低迷し、結果として国内経済が低迷してしまいました。酪農業界も例外ではなく、政府が実質的に乳製品輸出を管理したことで、ここ数年、乳業メーカーや酪農家の生産意欲は後退し、生乳生産量は伸び悩んでいました。同国の豊富な飼料生産を持ってすれば、生産拡大の可能性を大いに秘めていますが、何とももどかしい状況が続いていました。加えて、年率30%とされるインフレや経済低迷に伴う失業率の上昇などの影響を受け、国内消費量も伸び悩んでいます。
 こうした中、2015年12月10日、政権交代となり、マクリ新大統領が誕生しました。同政権では公約通り、輸出主導型への政策転換を急速に進めています。酪農政策では、生乳生産を早急に増やし、乳製品輸出の拡大により外貨獲得につなげるとの意向であり、2016年1月には、緊急的な生産振興策として酪農家への直接補助金を設けました。このほか、通貨ペソの切り下げによる国際市場での価格優位性向上なども進められており、アルゼンチンの生乳生産は拡大への素地が整った状況にあります。今後、同国の酪農がその能力をいかにして発揮していくのかに注目が集まっています。
【参考】 月報『 畜産の情報』 2016年1月号「 アルゼンチンの乳製品需給および酪農乳業の見通し−世界第5位の乳製品輸出国が抱える課題−」  

 https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2016/jan/wrepo01.htm

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