【農林水産省から】平成27年度 食料・農業・農村白書
最終更新日:2016年7月19日
農林水産省大臣官房広報評価課情報分析室
●はじめに
平成27年度の白書では、冒頭で「TPP交渉の合意及び関連政策」を特集として取り上げ、交渉の経緯、合意内容、「総合的なTPP関連政策大綱」、経済効果分析について記述しています。また、食料、農業及び農村の動向の記述において、初めて重点テーマを設け、食料自給力、輸出促進と日本食・食文化の海外展開、農業構造の変化、地方創生の動きを取り上げました。今回は、これらの内容についてご紹介します。
●特集 TPP交渉の合意及び関連政策
環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉は、平成27年10月に大筋合意に至り、平成28年2月に関係国間で署名されました。
TPPは、アジア・太平洋地域の12か国が参加し、世界のGDPの約4割、人口の1割強を占める経済圏をカバーするものです。その内容は、物品にかかる関税の削減・撤廃だけでなく、サービス及び投資の自由化を進め、更には知的財産、電子商取引、国有企業、環境等幅広い分野で新たなルールを構築するものとなっています。
TPP合意を受けた新たな国際環境の下において、我が国の農政は「農政新時代」というべき新たなステージを迎えています。生産者の持つ可能性と潜在力を遺憾なく発揮できる環境を整え、「強くて豊かな農林水産業」及び「美しく活力ある農山漁村」を創りあげていくために、「総合的なTPP関連政策大綱」(平成27年11月策定)に掲げられた政策を着実に実行していくこととしています。
●第1章 食料の安定供給に向けた取組
「重点テーマ1 食料自給力の動向」
平成27年3 月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画において、食料自給力指標が初めて提示されました。
食料自給力指標は、我が国農林水産業が有する潜在生産能力を最大限活用することにより得られる食料の供給熱量を、現実とは切り離された一定の仮定の下、食料の生産を4つのパターンに分けて試算しています。近年、食料自給率は横ばいで推移しているのに対し、食料自給力指標は低下傾向で推移しており、食料供給能力の低下が危惧される状況となっています。
このため、食料自給力指標を示すことにより、食料安全保障に関する議論を深めていき、その上で、食料の安定供給の確保に向けた取組を推進していくことが重要です。
「重点テーマ2 輸出促進と日本食・食文化の海外展開」
我が国の平成27年の農林水産物・食品の輸出額は、7451億円となり、3年連続で過去最高を更新しました。
このような中、海外市場での模倣品対策等のため、知的財産を保護・活用することが必要です。平成27年6月には、地理的表示保護制度の運用が開始され、登録産品はGIマークにより差別化が可能となりました。平成28年3月末までに12産品が登録されました。
また、拡大する世界の食市場の獲得のためには、引き続き、日本食・食文化の魅力を海外に広く普及していくことが重要です。平成27年5月から10月まで開催されたミラノ国際博覧会では、日本館において日本食・食文化をPRし、世界から高い評価を獲得しました。海外の日本食レストランの数も着実に増加しており、平成27年7月時点で前回調査(平成25年1月時点)の約1.6倍に相当する約8万9千店に増加しました。
●第2章 強い農業の創造に向けた取組
「重点テーマ 農業構造の変化」
我が国の農業総産出額は、昭和59年に11兆7千億円に達し、その後は、多少の増減が見られるものの、減少傾向となり、平成13年以降は8兆円台で推移しています。
また、農地面積は、近年は緩やかな減少傾向で推移し、平成27年は、449万6千haとなりました。
一方、平成27年の農業経営体数は、137万7千経営体で、減少傾向が続く中、法人経営体数は年々着実に増加しています。経営耕地面積規模別にみると、北海道では50ha以上層、都府県では5ha以上層の規模の大きい経営体が数は少ないものの増加しており、経営規模の拡大が進展しています。
平成27年の基幹的農業従事者数は175万4千人となり、 これを年齢階層別にみると、65歳以上が65%、40 代以下は10%と、著しくアンバランスな状態となっています。
●第3章 地域資源を活かした農村の振興・活性化
「重点テーマ 地方創生の動き」
農村では、都市部に先駆けて人口の減少や高齢化が進行しており、農業生産活動や地域の共同活動の脆弱化、地域資源の荒廃等が懸念されています。
一方で、近年、都市に住む若者を中心に農村の魅力の再発見が進み、都市と農村を人々が行き交う「田園回帰」ともいうべき流れが生まれるなど、農業・農村の価値が再認識され、農村の活性化につながる動きも見られています。
また、近年、諸外国における我が国への関心が高まっており、平成27年は過去最高の約1974万人の訪日外国人旅行者数を記録しました。 今後更に増加が見込まれる訪日外国人旅行者を地方へ呼び込むため、地域の食や歴史、景観等の多様な資源を集約、付加価値を向上させた上で情報発信するとともに、これら取組を農林水産業や食品産業の成長産業化、農業・農村の活性化に結びつけることが重要です。
● 第4 章 東日本大震災からの復旧・復興
東日本大震災において発生した津波被災農地2万1480haについては、平成28年1 月末まで1万5920ha(74%)の農地で営農再開が可能となりました。
また、被災3県の農業経営体数についてみると、平成27年は13万9千経営体で、震災前の平成22年に比べ22.6% 減少しました。一方、法人経営数は、平成27年は2058経営体で、震災前の平成22年に比べて32.6%増加しました。
農畜産物については、放射性物質が基準値以下の農畜産物のみが流通するよう、放射性物質の低減対策や吸収抑制対策、収穫後の検査等を組み合わせて安全を確保しています。こうした取組により、放射性物質の基準値を超過する農畜産物は大幅に減少しており、出荷制限の対象品目・地域も縮小しました。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整課 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196