【第一線から】チクレンによる乳雄牛肉のサプライチェーン構築に向けた取り組み
最終更新日:2016年11月2日
赤身肉へのニーズの高まり
チクレンの赤身牛肉
私たちが食べている国産牛肉のうち約5分の1は、白黒模様のホルスタイン種など乳牛の雄牛の牛肉です。肉質は赤身が多く、弾力があり食べごたえのあるのが特徴です。
これまで、牛肉のおいしさは、肉の脂肪の質と量に比例的に関係すると考えられてきましたが、近年では、消費者の嗜好の多様化などにより、脂肪交雑(霜降り)の少ない赤身牛肉のニーズも高まっています。
酪農家で生まれたホルスタインの雌牛はミルクを搾るために育てられます。しかし、雄子牛は肥育素牛として、牛肉の生産を専門的に行う育成・肥育農家へ販売されます。
今回は、大酪農地帯である北海道において、この乳用種の雄牛(乳雄)の生産・加工・販売まで一貫して行うチクレン(名称:北海道チクレン農業協同組合連合会、本所:札幌市)の取り組みを紹介します。
預託方式により生産者の負担を軽減
育成・肥育農家の経営は、肥育素牛やエサとなる配合飼料の購入費などが必要ですが、その費用は肥育素牛の導入から約20カ月かかる牛の出荷後でなければ回収できないため、その資金の確保が課題です。
特に、近年は、高齢化などによる酪農家戸数の減少で肥育素牛の頭数が減っていることなどからその価格は高騰しています。また、牛の肥育のために必要な配合飼料の価格も昔に比べ高くなっているため、乳雄の肥育農家の経営は厳しい状況にあります。
チクレンは、この生産者の負担を軽減するため、傘下の農協から集荷した肥育素牛を育成・肥育農家(18戸)へ預け、出荷できるまで育ててもらう預託生産方式により、北海道の乳雄生産を支えています。
生産から加工・製造・流通まで一貫管理
消費者ニーズにきめ細かく対応している(株)北海道チクレンミート
チクレンの乳雄牛肉生産の特徴は、生産から加工、製造、流通までをグループ内で一貫して行っていることです。預託農家で肥育された牛は、チクレンの関連会社である竃k海道チクレンミートでと畜・解体後、部分肉加工処理され、大手食肉加工メーカーや生活クラブ生協などへ販売されています。
近年、食品の消費形態は、消費者のライフスタイルの変化に伴い、多様な食品を少量ずつ購入するという多品目少量化が進んでいます。同社では、このような消費者ニーズの変化に対応するため、鮮度が高く使い勝手の良い小分けパック(一般的な牛部分肉規格は13部位のところ、小売用に最大50分割)の商品開発を進めています。
重要性を増すチクレンの取り組み
酪農家で生まれる乳雄を赤身牛肉の生産に利用する取り組みは、北海道の酪農・畜産の安定的な発展に欠かせません。一方、生産された乳雄牛肉は、国産赤身牛肉として根強いニーズがあります。このような需給関係に応えるため、チクレンによる再生産可能なサプライチェーンの構築を目指した取り組みは、今後ますます重要になっていくものと期待されています。
【コラム】
挙牛工房ゆうあいファームの乳雄一貫肥育
紋別郡湧別町の挙牛工房ゆうあいファームでは、乳用種去勢牛1,300頭と和牛と乳牛などを掛け合わせた交雑種の去勢牛180頭を成長段階ごとに異なる10棟の牛舎で飼養し、チクレンを通じて年間約1,000頭の肥育牛を出荷しています。乳用種去勢牛はすべてチクレンの預託牛です。毎月初生牛(生後7 〜 10日齢)を60頭、子牛(生後7 カ月齢)を20頭導入し、通常19 カ月齢で体重が750 〜 800kgほどになると出荷しています(年間930頭程度)。
同ファームの伊藤代表取締役は、チクレンの預託方式について、「肥育素牛導入の労力や導入時に必要な資金の確保に悩むことなく、飼育に専念できることがメリット。牛の体調管理をしっかりと行うことにより牛の事故(肥育中のケガや病気)を未然に防ぎ、肥育牛の増体を意識した飼養管理を心掛ければ経営も安定する」と高く評価しています。
事故牛の低減は、肉牛生産の最重要課題のひとつ。同ファームでは、5名の従業員が朝夕の1 日2 回牛舎を回って1 頭1 頭の健康チェックを行うことを日課としています。特に、初生牛は哺育期の終わる生後3 カ月までが、その後の発育や病気の発生を左右する重要な時期とのこと。哺乳ロボットによるミルクの摂取量の管理や肺炎に有効な牛舎内の空気消毒、牛の呼吸の速さの確認まできめ細かな飼養管理を行っています。
また、昨今の肥育素牛の減少に対処するため、今後、後継者である息子さんと共に酪農へ参入し、酪農部門で生産された乳雄を肥育部門で肥育する“ 乳肉複合経営” への移行を目指しています。
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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