【レポート】ブラジル鶏肉生産の現状と今後の見直し
最終更新日:2016年11月2日
ブラジルは、8〜9月にリオ・デ・ジャネイロを中心に南米初のオリンピック・パラリンピックが開催されたことで、多くの関心が集まりました。同国は、日本の裏側に位置していますが、150万人とも言われる日系人のコミュニティーが存在し、かねてより日本との関係が非常に深い国です。こうした中、私たちの食生活の中で身近なもののひとつとして挙げられるのが、ブラジル産の鶏肉です。ブラジルは世界最大の鶏肉輸出国で、平成27年度(2015年度)の日本の生鮮鶏肉輸入量のうち、ブラジル産は約8割を占めており、長年に渡って日本の重要な鶏肉調達先となっています。
2016年の鶏肉生産は減少の見込み
ブラジルの鶏肉生産量は、国内外の需要の伸びを受けて増加傾向で推移してきました。しかし、2016年は飼料の主原料であるトウモロコシが国内で不足する事態に陥り、一部地域では減産が避けられなくなっています。このため、ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)の2016年の生産見通しでは、前年比0・8%減の1300万tが予測されています。同国は世界第2位のトウモロコシ輸出大国ですが、国内でトウモロコシ不足に陥った要因として、(1)レアル安ドル高の為替環境下で輸出が増加し過ぎたこと(2)エルニーニョ現象の影響で干ばつが発生し大幅な減産となったことが挙げられています。
牛肉を上回り 最も消費される鶏肉
ブラジルは2000年代に入ってBRICs(経済成長が著しいブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の総称)のひとつとして目覚ましい経済成長を遂げましたが、近年その成長は鈍化しており、2016年は前年に続いてマイナス成長が確実視されています。こうした中、インフレによる物価の上昇で国民の消費生活にも影響が出ており、高価な牛肉の消費は落ち込む一方、安価な鶏肉の消費は堅調に推移しています。同国の代表的な料理である「シュラスコ」は牛肉が主ですが、今では鶏肉や豚肉も使われています。メインとなるのは牛肉ですが、鶏の心臓も多く使われ、人気メニューのひとつになっています。このほか、鶏の炭火焼の人気店もあります。
ブラジル産鶏肉の優位性
ブラジル産鶏肉は冒頭で述べたとおり、世界の旺盛な鶏肉需要に応えています。
同国の鶏肉生産は、他の主要鶏肉生産国と同様に、生産と食鳥処理・加工が垂直統合(インテグレーション)して行われており、厳格な生産マニュアルや輸出先の要求に応える衛生管理基準が徹底されている部分が評価されています。また、加工段階では、その圧倒的な生産能力を受け、同一の規格を定時で大量に供給できるなど優れた規格対応力を有しています。それに加えて、飼料となる穀物が自国で多く生産され、労働者の賃金も比較的安価であるため、他の主要鶏肉生産国より価格優位性を有しているという特徴があります。
長期的には大幅な増産が見込まれる
2016年は減産傾向となり、順調には進まなかったブラジルの鶏肉業界ですが、ブラジル農業省(MAPA)の長期予測では、今後大幅な増産が見込まれています。もちろん、さまざまな要因で数字のとおり成長するとは言えませんが、現地関係者によると、この見通しを上回る可能性もあるとしており、日本を含め世界の鶏肉輸入国が注目している状況にあります
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