【第一線から】大きな夢を持って、肉用牛繁殖経営へ新規参入!
最終更新日:2017年3月1日
日本の肉用牛経営
離島や中山間地域で営まれている肉用牛経営は、地域の活性化を担うとともに、国産牛肉の安定供給に重要な役割を果たしています。
日本国内の肉用牛生産の多くは、子牛を生産する繁殖経営とその子牛を太らせて出荷する肥育経営に分かれています。
繁殖経営については、母牛の飼養頭数が平成22年をピークに減少していましたが近年の肉用子牛価格の値 上がりもあって、平成28年に6年ぶりに増加に転じました。しかしながら、生産者の高齢化・後継者不足などにより年々農家数は減少しているのが現状です。生産者の確保や規模拡大は大きな課題となっています。
担い手の育成と支援に力を入れる島根県益田市
「出雲大社」や「石見銀山」を抱える島根県の畜産業は、農業産出額の40%以上を占める重要な産業で、このうち肉用牛は15%近くを占めています。県の西端にあって山口県と接する益田市では、水稲をはじめメロンやトマト、ぶどうなどの園芸作物が主に栽培され、中山間地域ではゆずやわさびなどの栽培が行われています。
このような中、肉用牛は平成28年2 月現在で、9000頭以上が飼養され、県内の主要産地になっています。この頭数については、近年ほぼ横ばいで推移しているものの、他の作物と同じように担い手や後継者不足により今後の農家数や肉用牛頭数の減少が、懸念されているところです。
このため、益田市では意欲のある担い手の育成対策を行うとともに、企業参入・規模拡大などに対する支援などを行っています。
将来的には500頭規模の繁殖経営を目指す
田原正太さん(30)は、平成24年度に益田市において繁殖経営へ新規参入された方の1人です。
田原さんは、県内でもトップレベルの繁殖経営を行っている父親の姿を見ながら平成19年に県立農業大学校を卒業後、益田市内の大規模肉用牛農家で3年間の研修を行いました。そこでは、常に消費者を意識した肉用牛生産(経営)を行うよう指導を受け、今の経営もその考えを活かしているとのことです。研修の後、父親の下で実習を重ねました。平成24年度に両親から独立した経営を行いたいなどの理由で、alicの事業を利用して繁殖経営へ新規参入しました。
今は本人と研修生の2人体制で、朝はえさやりと牛の健康チェック、昼間は牛舎の掃除とえさの準備、また、夕方と寝る前にもえさやりと牛の健康チェックなどを行っています。もちろん、その間には母牛の妊娠・出産もあれば、子牛を市場へ出荷するための作業もあります。このように日々牛が快適に過ごせる環境を考えながら奮闘しています。牛の世話以外にも牧草作りも毎日の重要な仕事です。
平成24年度に43頭から始めた経営は、今は59頭となっています。また、これまでで180頭以上の子牛を生産しました。田原さんは、体型と肉質のバランスの良い血統を選んでおり、購入者のニーズを取り入れながら、牛を育てていきたいと考えています。
「将来は、両親の経営も合わせ、500頭規模の繁殖経営を目指しています」と、田原さんは熱く語りました。今後、田原さんが益田市の中心的な繁殖経営者となる日を、地域の人は楽しみにしています。
繁殖経営への新規参入を支援
繁殖経営を始めるに当たっては、子牛を生む母牛の導入と牛舎・たい肥舎などの整備が必要であるため、多額の初期費用がかかるだけでなく、子牛を市場へ出荷し収入を得るまで、母牛の妊娠期間と子牛の育成期間のおおむね2年が必要であり、これが肉用牛経営への新規参入に際しての高い障壁となっています。
このため、alicは、肉専用種繁殖経営への新規参入を促進するため、平成11年度から平成27年度まで新規参入円滑化等対策事業を実施しました。本事業では、新たに繁殖経営を始める方(新規参入者)へ畜舎や母牛を貸し付ける農協などに対し、整備・導入費用の1/2の補助を行いました。なお、本事業は、平成28年度からは国の畜産クラスター事業に組み込まれました。
農協などは、新規参入者の技術・経営的支援を行うことが条件ですので、新規参入者は、経営を始めたばかりの不安定な時期を技術・経営両面から支援を受けられることなります。また、a l i c としても、新規参入者の経営安定化へのお手伝いとして、畜産専門アドバイザーと一緒に現地調査・指導を行っています。
平成11年度以降、直近の採択となった平成26年度までに採 択した新規参入者は、宮崎県や鹿児島県などを中心に214者に上りました。alicとしても、田原さんのように夢を持った新規参入者の皆さんが、夢を実現し、地域の中核となって日本の畜産を支えていかれることを期待します。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196