【第一線から】モスファームすずなり〜合言葉は“おいしさを求めて”〜
最終更新日:2017年3月1日
静岡県磐田市は、静岡県西部の天竜川東岸に広がる地域であり、遠州灘に面した温暖な気候となっています。静岡県のレタス年間出荷量は全国第7位。夏場は長野県のレタスが有名ですが、厳冬期(12月〜2月)の東京都中央卸売市場への出荷量は、静岡県が全国第1位となっています。この地で、耕作放棄地を開墾し、契約取引による野菜の出荷を拡大している農業生産法人潟cXファームすずなりの取り組みを紹介します。
潟cXファームすずなりの成り立ち
代表取締役社長である鈴木貴博さんは、祖父母の代より営んできた農園を大学2年から手伝い、2年間の研修を経て家業を継ぎました。最初の5年間は土壌管理や農業経営の難しさに悩まされましたが、6年目にレタスの契約取引を行っていた潟cXフードサービスの担当者に篤農家を紹介されたことが転機となりました。その方の「農業は、作物をつくるのではなく、育っているのを手助けすること」という言葉に感銘を受け、それからはしっかりとした土づくり、種蒔きから収穫まで手を抜かない基本的な栽培を第1に取り組んでいます。今では静岡県の特別栽培農産物(農薬の使用回数または化成窒素施肥量の合計が静岡県慣行基準の5割以下にしたもの)の認定を受けています。農業をともに継承した2 人の弟と数々の苦労を経て、経営が安定してきた平成20年に「作物も人もたくさん実る会社にしたい」という思いから蒲髏カ(すずなり)を設立し、さらに平成26年4月に蒲髏カと潟cXフードサービスの共同出資により、ハンバーガーやサラダに使用するレタスの冬期の安定供給、耕作放棄地の活用、農業者の育成などを目的として、潟cXファーム すずなりを設立しました現在、社員やパート40人以上とともに日々野菜づくりに奮闘しています。
耕作放棄地の集積と資源循環型農業によるレタス生産に向けた取り組み
潟cXファームすずなりは、磐田市内の耕作放棄地を開墾し、また、集荷場を整備し出荷の拠点としています。開墾当初は、畑から大きな石が出てトラクターの刃を傷付けたり、排水不良の農地に苦労したりしました。しかし、その後の社員の地道な努力により課題を克服し、今では蒲髏カでの野菜栽培の技術を活かし、肥料は地元の鶏糞や魚かすなどを使用したり、輪作しているえだまめの収穫後の残さもレタス栽培の堆肥として利用するなど、農薬や化学肥料に極力頼らない自然にやさしい土づくりに取り組んでいます。現在は延べ 27haの作付面積を有し、冬は、レタスを11月から5月上旬まで潟cXフードサービスなどに向けて年間約420t、夏は、えだまめを6月から8月まで百貨店やスーパーに向けて年間約40tを出荷しています。
次世代につなぐ人材育成
潟cXファームすずなりは、20代〜30代の若手社員が多く、人材育成にも力を入れています。出荷場の中で育苗、栽培、出荷などの担当者を決めて仕事を任せるほか、定期的に報告会を開くとともに、IT技術を活用して栽培履歴をはじめとした生産情報を社内で共有するようにしています。
また、潟cXフードサービスが社員研修として実施している、モスバーガーのフランチャイズ店舗のオーナーや店長の収穫体験を受け入れるなど、外食産業と農業生産現場との橋渡しをする取り組みも行っています。
今後の展望
レタス、えだまめの経営基盤をしっかり固めた上で、契約先が求める7分結球で、優しい甘みが感じられ、苦みの少ないレタスの品種を開発して出荷したい、また、将来はモスブランドの新メニューの開発に参画していけたら、と鈴木社長は力強く語ってくれました。
潟cXファームすずなりは、alicが実施している「契約指定野菜安定供給事業(価格低落タイプ)」に加入しています。これは、市場価格に連動して価格が変動する契約を締結している生産者に対し、価格の著しい低落が生じた場合に補てんを行う事業で、潟cXファームすずなりは、この事業を利用することで、経営リスクの軽減を図っています。鈴木社長からは、「この事業は再生産に大きく貢献しており助かっている。今後も活用していきたい。」と語っていただき、野菜生産の一助となっています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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