【トップインタビュー】種類別×形態×フレーバーから生まれる無限大のアイスクリームの魅力 〜5月9日はアイスクリームの日(5月はアイスクリーム月間)〜
最終更新日:2017年5月10日
一般社団法人日本アイスクリーム協会 会長 野口純一氏(森永乳業株式会社代表取締役副会長)に聞く
アイスクリームは、おいしくて手軽に食べやすい食品として、幅広い年代の方に愛され、好きなデザートの一番手です。そこで、アイスクリームの衛生や品質向上、消費拡大に取り組んでいる一般社団法人日本アイスクリーム協会の野口会長にお話を伺いました。
日本アイスクリーム協会について教えてください。
一般社団法人日本アイスクリーム協会は、昭和41年にアイスクリーム類および氷菓の衛生・品質の向上を図ることによって、消費者の皆さんに、安全・安心な商品を提供し、豊かな食生活に寄与することを目的に発足しました。
戦後の混乱期には衛生状態を改善するため、全国各地区に協会が設立され、自主的な品質改善活動を行っていました。昭和30年代になると、東京オリンピック開催を控え、国際的な品質基準に合わせた商品づくりが必要との気運が高まり、衛生品質改善の推進と新たな規格基準作成の動きが始まりました。当時、業界には日本アイスクリーム協会連合会など3つの団体があり、個別に活動をしていましたが、統一した基準をつくるため、これらの団体が大同団結して発足したのが当協会です。
どのような活動をしているのですか。
業界が健全に発展し続けるためには、衛生および品質の向上、また、生産技術の改善が不可欠です。そのため、研修会の開催や衛生功労者の表彰、表示の適正化に取り組んでいます。その他、5月9日のアイスクリームの日を中心とした消費拡大などにも取り組んでいます。
なぜ、5月9日がアイスクリームの日となったのですか。
前身である東京アイスクリーム協会が、東京オリンピックが開催される昭和39 年に消費拡大の活動として、アイスクリームのシーズンインとなるゴールデンウィーク明けの5月9日にイベントを開催したことから、この日を「アイスクリームの日」としました。
昨年は、国内主要都市7カ所で「アイスクリームフェスタ」と称したイベントを開催し、さまざまな催しに加えて来場者に延べ2万個のアイスクリームのプレゼントなどを行いました。
また、社会貢献活動の一環として、昭和39年以来、社会福祉施設へアイスクリームを寄贈しており、直近では約350カ所に対し、約4万個を寄贈しています。
アイスクリームの起源や日本での普及について教えてください。
アイスクリームの起源は諸説あるのですが、紀元前にアレキサンダー大王が軍の士気を鼓舞するために、山から氷や雪を持ってきて糖蜜などで味付けして、兵士に与えたといわれています。
日本でのアイスクリームの登場は、明治2年に町田房蔵という人物が横浜馬車道通りで「あいすくりん」を製造・販売したのが始まりと言われています。当時の値段は、女性工員の月給の半分程に相当し大変高価なものでした。その後、徐々にアイスクリームは広まっていきますが、一般に広く普及するようになったのは大量生産が進んだ昭和30年頃になります。
アイスクリームの売り上げについて教えてください。
協会がスタートした時は約500億円の売り上げだったのですが、その後、順調に売り上げを伸ばし、平成6年に4296億円まで達しました。しかし、バブルの崩壊やスーパーマーケットやコンビニエンスストアの台頭により小売店(個人商店など)が減少し販売機会が失われたこと、また、ペットボトル飲料やチルドのプリンやゼリーなどデザートの販売が始まり、お客さまの選択肢が広
がったことからアイスクリームの売り上げは減少し、平成16年には3330億円となりました。
そこから、業界全体で何とかしようと積極的な商品開発、プロモーションを行い、結果としてスーパーマーケットやコンビニエンスストアでの販売が定着して販売量が伸びました。売り上げは平成16年を底にV字状に回復することができ、平成26年に369億円と最高金額を記録してから3年連続で記録を更新しています。最近、人気のヨーグルトの売り上げは約4000億円ですが、アイスクリームは5000億円まであとちょっとのところまで来ました。
売り上げが伸びてきたのはどんな所で感じられますか。
私は、今の会社に入社して約40年間、営業職が長いのですが、昔のスーパーマーケットのアイスクリーム売場は何の変哲もなく、冷凍食品と並列されていました。冬になるとアイスクリーム売場の面積が狭められ、冷凍食品売場の面積が広がるという感じでしたが、最近は冬になっても売場は狭められることはなく、アイスクリームが売場の中で市民権を得たのだと感じています。
また、コンビニエンスストアでも上部が開放された大きなショーケースでの販売が定着したことで、売り上げの伸びにつながっていると思います。
会長ご自身のアイスクリームへの思い入れを教えてください。
私自身、学生時代にサッカーをやっていまして、当時は練習帰りにバニラのスティックやみぞれを自分で買ったり、差し入れしてもらったりしてよく食べたものです。体を動かした後の冷たく甘いご褒美は格別でした。
アイスクリームに関連する仕事を始めてからは、自宅の冷凍庫に常時5個以上はストックして、家で食べるのを楽しみにしていますね。また、お店で新商品を見つけるとついついショーケースの前で、商品の価格や付加価値を分析しつつ買ってしまいます。
アイスクリームの魅力について教えてください。
「冷たさ」「甘さ」「濃厚さ」といったおいしさの魅力はもちろんのことですが、ひとつは、他のデザート商品に比べコストパフォーマ
ンスが良いこと、そしてなんと言っても商品の多様性があるところです。
アイスクリームは、食品衛生法の関連法規に基づき、乳固形分と乳脂肪分の違いにより、4つの種類別名称(「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」)に分類されます。この乳固形分と乳脂肪分の含有量によって風味が異なることに加え、カップやスティック、モナカなどの多様な形態があり、バニラやチョコレート、抹茶といったさまざまなフレーバーから作られます。これらをかけ合わせることでバラエティ化が進み、商品が無限に広がっていきます。この商品の無限性は、アイスクリームの大きな魅力の一つだと考えます。また、手軽に買えて家庭で保存でき、いつでも食べられることもアイスクリームが好まれる理由なのではないでしょうか。
アイスクリームは凍っているのに口当たりが滑らかなのはどうしてですか。
口当たりを滑らかにするためには、空気も大切な要素です。アイスクリームに混ぜられた空気の泡や脂肪の粒子が冷たさを伝えにくくするため、滑らかな口当たりになります。
アイスクリームは、脂肪やたんぱく質、糖質などの成分と水、空気からできていますが、これらを均質化という工程を経て細か
く均一にすることで、口の中でサッと溶ける独特の口当たりが生まれます。また、乳脂肪はアイスクリームにミルクのフレーバーとコクを与え、滑らかな組織と粘りと硬さを与え、乳脂肪の含有量が適度に高いほど、コクのあるまろやかな風味が生まれます。
アイスクリームのトレンドについて教えてください。
当協会が実施する意識調査(アイスクリーム白書)によれば、アイスクリームは自分のために購入しているという結果が強く出ており、「自分へのご褒美」といったイメージが定着しています。そのため、個人の好き嫌いによって選択されるため、トレンドというものがないのではないかと考えています。
最近は、昔はよく見かけたハード型のかき氷の販売は落ちていますが、これといったダントツのトップシェアを誇る商品は少ないです。
ただ、アイスクリームのイメージとしては、これまでの「夏の冷たいデザート」というイメージに「通年型の冷たいデザート」というイメージも加わっているようです。月別の売り上げを見ても、秋冬期の売り上げが伸びています。
これらの魅力が評価され、アイスクリーム白書では調査開始の平成9年以来、好きなデザートで不動の1位となっています。まさ
に、「キングオブデザート」というイメージにつながっているのだと思います。
最後に今後の課題について教えてください。
課題は大きく4つあると考えています。
1つ目は、シニア層向けの商品の開発です。調べてみると、シニア層の方がアイスクリームをよく食べているという傾向がわかっています。高齢の方は、量よりも質を求めているので、それに応えられる商品を増やしていきたいと考えています。
2つ目は、アイスクリームが登場する生活シーンの数を増やしていくことです。日本の1人当たりの年間消費量は7.3リットルで、一位のニュージーランドは15.5リットルと約2.1倍です。しかし、外食での消費に限定してみるとニュージーランドは日本の5倍も消費しています。これからは、外食の中でアイスクリームを食べてもらえるシーンを増やしていきたいと思います。
3つ目は、増加している外国人観光客に日本のアイスクリームを食べてもらうことです。日本のアイスクリームのバリエーションの多さは、世界で一番進んでいると思っていますから、その特徴をしっかり活かして外国の方にもジャパンブランドとしてのアイスクリームをPRしていきたいと考えています。
4つ目は、海外への輸出です。アイスクリームは凍らせて保存する必要がありますから、中国や東南アジアへの輸出を考えた時には、時間がかかると思いますが、流通段階や家庭での冷凍庫の普及状況なども考慮しつつ検討していきたいと考えています。
アイスクリーム協会は、業界の発展のため、大前提である商品の衛生および品質の向上を図るとともに、各社と協力し、おいしい魅力的なアイスクリーム商品を提供できるよう挑戦し続けていきたいと思います。
一般社団法人日本アイスクリーム協会 会長 野口純一(森永乳業株式会社 代表取締役副社長)
昭和25年生まれ
昭和48年 上智大学文学部卒後、森永乳業株式会社入社
平成19年 同常務取締役 常務執行役員 営業本部長 就任
平成21年 同専務取締役 専務執行役員 営業本部長 就任
平成26年 同取締役副社長 副社長執行役員 第一営業本部長 就任
平成27年 同代表取締役副社長 副社長執行役員 営業本部長 就任
同年6月より一般社団法人日本アイスクリーム協会 会長に就任
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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