【第一線から】「自分へのご褒美」野菜 プチヴェール 〜静岡県浜松市 原田正彦さん〜
最終更新日:2017年5月10日
1990年生まれの新野菜「プチヴェール」
フランス語で「小さな緑」という意味のプチヴェール(※)は、青汁の原料などに使われるケールと芽キャベツを掛け合わせてできた新しい野菜で、1990年に静岡県の採種場で誕生しました。
バラの花のような見た目の華やかさと、上品な甘みとコクを感じる味の良さ、一口サイズでさっと茹でるだけでそのまま食べられる調理の手軽さなどから、近年人気が高まっています。
また、一般的ないちごやみかんと同じ11〜13度という糖度の高さや、βカロテンやビタミンC、カルシウム、鉄分などを多く含んだ栄養価の高さもプチヴェールの特徴です。
プチヴェールの担い手原田正彦さん
静岡県浜松市でプチヴェールを栽培する原田正彦さんは、JAとぴあ浜松プチヴェール分科会の代表を務めています。原田さんは、1 9 9 5 年からプチヴェール栽培を始め、その当初から、種苗会社やJ A が行うプチヴェールの品種改良の試験に意欲的に携わってきました。
大学卒業後、化学関係の会社で水質分析の仕事をされていた経験から、肥培管理や防除に役立つ知識が豊富で、また、就農直後から、新たな野菜の開発改良や試験栽培の担い手として、活躍しています。
「甘くするのが得意」と笑う原田さんは、自身のほ場のプチヴェールの糖度を、通常の倍以上の26度まで上げたことがあるほどで、収穫したプチヴェールを集めた作業場は、まるで蜜入りりんごのような香りが漂います。
品種改良に込める想い
静岡県内でのプチヴェール栽培は、原田さん在住の浜松市の他に、磐田市でも盛んです。ほ場が赤土の浜松市に対し、磐田市は黒土。原田さんはどちらの土質にも合う品種の試験栽培を、採種場などと共同で行ってきました。そこには、プチヴェール生産の現状に対する原田さんのある想いがあります。
徐々に人気が高まり、レストランなどでは見かけるようになったプチヴェールですが、生産現場では高齢化により生産者がっており、消費者が量販店などでいつでも気軽に買うことができるほどの量を確保するのは難しい状況です。原田さんの地区でも過去23名ほどいた生産者が現在は10名ほどに減ってしまいました。
サラリーマン経験のある原田さんは販売側の苦労も分かります。「量が足りないうちは売り方も難しいだろう」と感じ、まずは国内全体の生産量を増やすことが先決と考え、他産地をライバルと思わず、「一緒にプチヴェールを増やそう」という応援の気持ちから、積極的に品種改良に取り組んできました。
安定した品種を作ることで、日本全国の生産者や栽培面積を増やし、流通量を増加させて、プチヴェールが消費者にとってもっと身近な野菜になることを目指しています。
プチヴェールの未来像
また、近年の記録的な多雨や不順な天候は、これまでの知見で対応しきれない時もあります。
「1990年に生まれてせっかくここまできた野菜だから途絶えさせたくない」と話す原田さんは、品種や肥料、定植時期を変えるなど、試行錯誤を続けます。
原田さんは、見た目に華があって味も良いプチヴェールが、「今日は少し贅沢をしよう」と思ったときに消費者に手にとってもらえるような『プチ贅沢』的存在の野菜になれば、との願いを持ちながら努力を続けています。
※「プチヴェール」は、(株)増田採種場の登録商標です。
(野菜需給部)
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