【第一線から】九条ねぎの生産・加工・販売 6次産業化で売り上げ10億円 〜こと京都株式会社〜
最終更新日:2017年7月5日
京都市は、京都盆地の南部に位置しているため、夏場は蒸し暑く、冬場はとても寒いといった盆地特有の気候風土を有しています。そうした気候に合わせて古くから栽培されてきたさまざまな野菜は、京都の伝統野菜「京野菜」と呼ばれ、多くの人々に親しまれています。この京野菜のひとつである「九条ねぎ」の生産・加工・販売を手掛ける農業生産法人 こと京都株式会社の取り組みを紹介します。
こと京都株式会社のあゆみ
代表取締役である山田敏之さんは、アパレル業界に勤務されていましたが、平成7年、32歳の時に就農しました。年商1億円という目標を掲げ、ほうれんそうやキャベツ、小松菜、ねぎなど多品目の野菜生産に取り組みましたが、その年の売り上げは目標には全く届きませんでした。そこで、作業効率を上げるために、京野菜としてのブランド力があり周年栽培ができる「九条ねぎ」に品目を絞ることにしました。さらに、自ら生産した九条ねぎをカットして、その加工ねぎを東京のラーメン屋に直接売り込みに行きました。この営業が功を奏し、山田さんのみの生産量では補えないほどに売り先が増え、当初目標としていた1億円達成のめどが立ったことから、平成14年に有限会社竹田の子守唄を設立し、法人化しました。その後平成19年に、自社の強みである京都を社名に入れ、現在のこと京都株式会社に社名を変更し、大規模なカット加工工場を建設しました。また、一年中安定したねぎの供給を求める契約先の需要に応えて、京都市内で生産量が落ちる夏場には夜温の低い亀岡市や南丹市美山町で生産を行い、京都府産の九条ねぎの周年供給を実現しました。こうして、生産から販売までを安定して行うことのできる体制を作り上げ、平成28年の売り上げは10億円を超えるまでになりました。
おいしさと安全・安心に自信あり
こと京都株式会社で扱う九条ねぎは、品質にこだわり、安全・安心な栽培方法を守って生産されています。栽培品種がさまざまある九条ねぎの中でも、一般的な九条ねぎよりも栽培に手間がかかるものの原種の特性が強い品種のみを栽培しています。また肥料や農薬の使用履歴は、細かく記録してパソコンで管理しており、安全な九条ねぎの生産にこだわっています。カットなどの加工を行う工場では、食品の安全性を確保する衛生管理手法であるHACCPを導入し、徹底した衛生管理を行っています。こうしたこだわりを持って生産・加工した九条ねぎを自ら販売するので、販売先からの問い合わせにも迅速に対応することができます。自信を持った品質のものを安定して供給できる体制を整えていることが、会社の大きな強みであり、これは今後の農業界にさらに必要となるだろうと山田さんは考えています。
独立支援研修生制度
こと京都株式会社では、独自の制度として農業の起業を支援する独立支援研修生制度を実施しています。この制度では、栽培技術などの基本的なことだけではなく、生産管理や加工・販売などの独立後に必要となるマネジメント面の研修も受けることができます。独立後は、作ったねぎをこと京都株式会社が全量買い取るので、新規就農後の不安要素である販路の確保の心配もありません。まずは農業で生計を立てるために、サポートを手厚く受けることのできるねぎ作りに取り組み、ねぎの売り上げで基盤ができた後、他の品目にも取り組むことができる仕組みです。13名が現在研修中で、すでに独立した研修生は4名となりました。この制度を経た方は皆、より質の良い野菜を求めて作るようになるそうです。
今後の展望
こと京都株式会社では、契約する農家に、alicで実施している「契約野菜収入確保モデル事業(出荷促進タイプ)」の申請を勧めています。こと京都株式会社の契約価格は一定のため、市場の相場が高い時は、市場に出荷した方が農家の利益は上がります。しかし、この事業に加入することで、市場の相場が高騰した時に契約に沿って出荷をすると交付金が交付されるため、農家の収入の確保を図ることができます。「この事業への加入は、農家がこと京都株式会社に安心して出荷してくれる要因になる。」と、契約取引の信頼関係を築く一助となっているとのことです。
山田さんは、平成26年にこと日本株式会社を設立しました。こと日本株式会社は、日本全国のねぎの生産・加工・販売を手掛ける、ねぎの専門商社です。京都の九条ねぎで、良質なねぎを安定して供給する仕組みを確立させた山田さんは、京都の九条ねぎに限らず「日本のねぎ」というより大きな規模で同じような取り組みを推進して、国産ねぎ生産量の1割のシェア獲得を目指し、発展し続けています。
(野菜業務部)
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