【レポート】タイのタピオカでん粉生産動向
最終更新日:2017年11月1日
皆さんの中には、これまでにタピオカドリンクを飲んだことがある方も多いのではないのでしょうか。もちもちっとした食感で、ドリンクにもとても合うこのタピオカ、原料は何だか知っていますか。実は、キャッサバといういも からとれるでん粉をもとに作られています。日本はさまざまな種類の天然でん粉※を輸入していますが、そのうちタピオカでん粉が占める割合は全体の8割以上で、しかもそのほとんどをタイから輸入しています。そこで今回は、日本の輸入量第1位のタイのタピオカでん粉の生産動向について紹介します。
※でん粉には、ばれいしょやトウモロコシなどをもとに製造される「天然でん粉」と、天然でん粉に化学的な処理などを施し、物性などを改質、改善した「化工でん粉」があります。
世界の5割以上を占めるタイのタピオカでん粉生産
世界で最も多く生産されている天然でん粉はトウモロコシを原料とするコーンスターチですが、タピオカでん粉は、お菓子やパンなどの食品用としてだけでなく、接着剤などの原料として工業用にも利用され、天然でん粉の中ではコーンスターチに次ぐ生産量となっています。その生産地域は、アジアが全体の9割を占め、次いで南米、アフリカなどとなっており、アジアの中でも、タイの占める割合は5割以上です。
今後の減少が懸念されるキャッサバ生産
タイのキャッサバ生産量は、コナカイガラムシという害虫が大量に発生した影響から2010〜2011年は大幅に減少しましたが、2012年には害虫発生前の水準まで回復し、その後は安定して推移しています。
しかし、近年キャッサバの販売価格が低下していることから、収益性に勝る他作物への転作が進んでおり、今後の生産量の減少が危惧されています。販売価格が低下した要因の一つは、タイにとって最大の輸出先である中国のキャッサバ製品(タピオカでん粉やタピオカチップ)の需要が減少しているためです。
生産性の向上が今後の課題
キャッサバ生産量の減少が懸念されるタイでは、生産性向上に向けたさまざまな取り組みが実施されているので、そのいくつかを紹介します。
1つ目は新品種の開発です。農地面積に限りがあり、作付面積の拡大が難しいタイでは、生産量を増やすため、今よりも収量の多い品種の開発が重要です。それに対応するため、非営利組織であるタピオカ開発基金では、多収性とでん粉含有率の高さを重視した品種の開発、生産者への苗の配布、営農指導を行っています。今年配布を始めた“ホイボン90”という品種は収量とでん粉含有率が高いだけでなく、茎葉の繁茂が早く、地面に直接日光が当たらなくなるため、雑草が生えにくくなるというメリットがあり、今後生産者に人気がでるものと期待されています。
2つ目は、生産者のグループ化です。タイでは、個々の生産者が所有する農地は小さく、また、前述の通り農地面積が限られているため規模拡大も難しいとされています。そこで、生産者がグループ化し、キャッサバの共同販売、農業資材などの共同購入、機材の共同利用によりコスト削減に努めています。その他、グループ内で定期的に勉強会などを開催し、グループ全体のさらなる単収向上を目指しています。
他にも、政府が生産者に対する低利融資制度を整えたり、燃料業界ではキャッサバ由来の燃料(バイオエタノール)の生産を促進させたりと、さまざまな方法で課題解決に向けて取り組んでいます。
日本にとって重要なタピオカでん粉の輸入先であるタイにおいて、これらの取り組みにより生産量がどのように変化していくか、今後の動向が注目されます。
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