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【alicセミナー】卸売市場の社会的役割と今後の改革方向

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最終更新日:2017年11月1日

 先般、国が決定した農業競争力強化プログラムの「生産者に有利な流通・加工構造の確立」の中で、卸売市場の見直しが進められており、その役割は、改めて注目されているところです。そこで、9月26日(火)のalicセミナーでは、農産物流通について知見の深い東京聖栄大学 客員教授 藤島廣二氏を講師に迎え講演いただきましたので、その概要を紹介します。
 

卸売市場の社会的役割

セミ1

 日本の卸売市場は、その成り立ちの経緯から、海外の市場と比較すると、卸売業者数が少ないなど、規制が厳しいものになっているといえます。その反面、専門分野に長けた仲卸業者が多く、市場には多様な品種が集まるようになったという特徴があるのも事実です。そこで、日本の卸売市場の社会的意義を整理したいと思います。まず、1つ目は、必要とする全ての人に開かれた取引システムということ。小さなスーパーが多い日本の小売業ですが、そのような買い手でも仕入れができます。また、取引の値段の高低はあるかもしれませんが、天候などにより生産者の出荷が増えても、すべて市場は受け取ります。契約取引ではこうはいきません。生産者は、生産に専念できるわけです。2つ目は、出荷側・仕入側双方が納得しうる価格が形成されるということ。卸売業者は生産者側の、仲卸業者は買い手側の視点で、厳格に価値判断が行われ、価格が決まります。いろいろなところで、卸売市場価格が指標として使われるのはそのためです。消費者にとっては、価格をみて価値を判断できるということです。3つ目は、生活の豊かさへの寄与です。多様な品揃えが、店舗・商品の選択幅を拡大させます。
 

業務需要対応力の強化と発揮が今後の卸売市場に必要

 このように卸売市場の役割は大きいと思われるにもかかわらず、野菜や果実などの市場経由率は年々下がってきています。これは、生産者直売所などの進出の影響が大きいといわれていますが、果たしてそうなのでしょうか。生産者直売所と市場経由の小売販売のコストを試算してみると、運搬費用や人件費などのコストが直売所の方が高いという結果があります。また、直売所の販売状況をみても、卸売市場の停滞の理由が生産者直売所にあるというには、その流通量は少なすぎるのではと考えます。一方、日本は高齢化の影響などで食の外部化が進み、業務需要向けに加工品の生産・流通が増えました。かつては、業務向け加工品は、市場を経由しない輸入品が主に担っていました。つまり、市場流通率が低迷した要因は、卸売市場が加工品に対応できていなかったからではないかと考えます。それゆえ、これからの卸売市場には、生鮮品での業務需要対応、加工業務への進出、中食・外食業への進出・取り組みが必要になり、産地との連携 による魅力のある生産物の集荷・販売、加工・業務用ニーズに対応した機能強化と商品開発などの新たなビジネスモデルに取り組むことが重要と考えます。
 

セミ2

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