【第一線から】でん粉原料用ばれいしょ生産と酪農の複合経営の取り組み 〜北海道小清水町 大出悠司(おおいで ゆうじ)さん〜
最終更新日:2018年1月10日
小清水町は、オホーツク海に面した北海道の東部に位置し、網走国定公園小清水原生花園などを有する豊かな自然に囲まれた町です。冬の寒さは厳しいものの、作物の栽培時期である夏の気候は比較的穏やかで、日照時間にも恵まれており、てん菜・ばれいしょ・小麦などの生産を主とした畑作と酪農が盛んな地域です。
今回は、小清水町で畑作と酪農を複合経営している大出悠司さん(30歳)の取り組みについて紹介します。
経営の概況
大出さんは、両親と3人で有限会社大出農場を経営しています。
畑作では、昨年は33haの 畑に砂糖の原料となるてん菜、でん粉の原料となるじゃがいも(でん粉原料用ばれいしょ)、小麦の作付けをしました。同じ作物を繰り返し栽培すると起こる連作障害を防ぐために、順番に畑の作物を入れ替えて栽培する輪作を行っています。
この他、酪農用に飼料用トウモロコシ5ha、牧草20haを栽培し、乳用牛を80頭飼育しています。
大出さんに就農されたきっかけについて伺ったところ、農業関係の高校や大学ではありませんでしたが、大学を卒業するに当たり、両親の日々の生活や営んでいる畑作・酪農の様子を見て、また、ご自身が大学で学んだ情報通信の技術を農業に生かせないかとの思いから就農したそうです。
複合経営を生かした経営の安定
大出農場の運営は、大出さんが畑の管理、作物の栽培や収穫作業、ご両親が牛の世話や搾乳などの酪農に係る作業を主に行っています。
家族で経営しているため、春先の育苗の準備から作物の種まきや苗の植え付け時期は、人手が足らずアルバイトなどを雇い作業を行うこともあるそうです。しかし、畑作物と酪農を併せて行っていることで、多様な収入源があることから一品目の需給の変化に経営が左右されにくいなどの利点があるといいます。
大出さんが収穫したばれいしょは、全てをでん粉工場に出荷しています。でん粉原料用ばれいしょは価格も安定していることから、収入が見込みやすいといいます。
地域資源の相互利用
酪農経営では、家畜のふん尿処理が問題となることが多いのですが、大出さんは、ふん尿を堆肥にして自らの畑に利用することで、良質な土作りに役立てています。堆肥が多くできた場合は、周辺の畑作農家に提供し、麦わらと交換することによって、酪農に不可欠な牛舎の敷料を入手するなど相互に活用しています。
大出さんのでん粉原料用ばれいしょの出荷先であるJAこしみず澱粉(でんぷん)工場では、でん粉を製造するときにできるでん粉かすを利用して、ふすま(小麦の表皮部分)やたんぱく質を配合した飼料「でん粉かすサイレージ」を作り、有効利用する取り組みを行っています。大出さんもでん粉かすサイレージを牛の餌として利用し、飼料コストの削減につなげています。
農業を活性化する取り組み
大出さんは、安定した農業経営を行う上で、最新技術の導入や日々の情報収集が必要と考えており、自らの農場において播種(はしゅ)作業に使うトラクターにGPS(衛星利用測位システム)を導入し、自動操舵によ る農作業の省力化や、他の生産者と一緒に研修や他事例の視察を実施しています。
また、日々の作業を記録する際に、農協のシステム(JAこしみず生産履歴登録支援システム)を活用しており、作業日誌として保存するとともに、作業内容が農協と情報共有されます。農協は、生産者の生産履歴を把握し、適時に防除管理などの生産情報を発信することができ、大出さんはタイミングを逃すことなく、施肥や防除の情報を農協から入手することができるそうです。大出さんはさまざまな視点から経営を工夫し、効率的な作物生産に取り組んでいます。
でん粉原料用ばれいしょを支える価格調整制度
国内産いもでん粉は、主要な輸出国と比べ、原料作物の生産条件や立地条件に大きな差があります。このため、alicは「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、輸入でん粉等から徴収した調整金を財源に、国内のでん粉原料用いも生産者とでん粉製造事業者を支援しています。
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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