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【レポート】変革期を迎えたEUの砂糖産業

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最終更新日:2018年1月10日

 EUは、ブラジル、インドに次ぐ世界第3位の砂糖生産地域であり、世界の砂糖のおよそ1割を生産しています。
 EUでは、2017年9月末、約半世紀にわたって行われてきた農業政策が大きく変わり、砂糖産業にもさまざまな影響が現れると予想されています。そこで今回は、この政策の変化がEUの砂糖産業に与える影響などについて紹介します。
 

EUの砂糖生産

 砂糖の原料は、暖かい地域ではサトウキビ、涼しい地域ではてん菜ですが、日本のてん菜生産地である北海道と緯度が近いEUは、てん菜から砂糖を生産しています。EUでのてん菜の生産は、シュガーベルトと呼ばれる地域(図を参照)に集中しており、
主要生産国は、フランス、ドイツ、ポーランドです。そして、シュガーベルトには製糖工場も多くあり、周辺で収穫されたてん菜から砂糖を作っています。
 

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農業政策の変更

 EUには、CAPと呼ばれるEU全体で行われる共通農業政策が存在します。これまでのCAPでは、砂糖の需給調整のため、毎年度、砂糖を生産している各加盟国に砂糖の生産量が割り当てられ、各国はその割当数量に基づきてん菜および砂糖を生産してきました。また、砂糖の輸出量にも上限が設けられていました。しかし、今回のCAPの変更により、規制は大幅に緩和され、各国はより自由な市場競争の下で、砂糖を生産・販売することが可能になりました。

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砂糖の輸出に期待

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 欧州委員会によると、今回のCAPの変更により、EUの2017/18年度(2017年10月〜18年9月/EUでの砂糖の年度区分)の砂糖生産量は2013万tと、前年度より約2割増加すると見込まれています。また、輸出量は前年度比2倍強の280万tに達すると予想されており、今まで輸出より輸入の方が多かったEUが、今後は輸出の方が多くなるとされています。輸出先としては、高く買入れてくれることが見込まれるペルシャ湾沿岸や近隣の地中海地域などに期待が高まっています。
 輸出への期待は、てん菜の生産者や製糖工場だけでなく、輸出関連業者でも高まっています。例えば、シュガーベルトの中心に位置するベルギーのアントワープ港で、EUで最大規模の輸出ターミナルを運営するユーロポーツ(EUROPORTS) 社は、今後、砂糖の生産量が増えると、製糖工場に近い同港からの輸出ニーズが高まり、砂糖の取扱量は、およそ3倍になると見込んでいます。そのため、約3000万ユーロ(約39億9000万円)を投資し、同港へ搬入する貨物列車やトラックなどの搬入スペースの拡張やコンベアの増設を行い、倉庫の保管能力も増やしました。
 
※1ユーロ=133円で換算
 

ベルギー伝統のSucrerie Couplet S.A. 社のパールシュガー

 皆さん、ベルギーワッフルを食べたときにシャリっとした食感の砂糖を味わったことはありませんか。この独特な食感を生み出す砂糖は、パールシュガーと呼ばれ、生地に練り込んでも溶けにくいという特徴があり、ベルギーワッフルづくりには欠かせません。近年は、製菓・製パン原料として日本も900 〜1000t 程度輸入しています。パールシュガーを製造する創業170 年のSucrerie Couplet S.A. 社は、30 年前からパールシュガーの生産を開始し、そうした特色ある製品の生産に特化して需要を伸ばしてきました。同社は、特色ある製品を売りにしているため、今回のCAP の変更が同社の生産・販売 体制へ与える影響はほぼないとみています。今後もパールシュガーの他、植物由来油脂やチョコレートコーティングの新商品の開発などにより、EU 域内外のさらなる需要の拡大を目指しています。
 

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