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【レポート】ブラジル鶏肉輸出の現状と今後の見通し

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最終更新日:2018年3月7日

 地球儀で見ると日本の反対側に位置するブラジルは、世界一の鶏肉輸出国として知られています。日本も、以前から同国より鶏肉を輸入しており、特に2004年1月にタイからの輸入が鳥インフルエンザの発生によりストップして以降、2013年12月に再開されるまでの間、ブラジル産鶏肉は日本の鶏肉輸入量の約9割を占めていました。現在も、輸入量の7〜8割をブラジル産が占めており、私たちにはよく目にする食材となっています。ブラジル産鶏肉の強みは多々ありますが、他の鶏肉輸出国と比較して最大のものは、日本をはじめ多くの国で発生している鳥インフルエンザ(AI)が一度も発生したことがない(AIフリー)という点です。
 今回は、AIフリーという強みを生かしたブラジル産鶏肉の輸出動向と今後の見通しについて、紹介します。

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記憶に新しい食肉不正問題

 2017年3月17日、ブラジルの一部の食肉加工場が衛生基準を満たさない食肉や食肉加工品を国内外へ販売していたという問題が発覚し、世界各国で大きく報道されました。ブラジル政府は、こうした事態を受けて問題となった21工場に対し食肉の輸出禁止を命じる一方、日本をはじめとした多くの輸入国は、直ちにブラジル産食肉の輸入を停止しました。この件について、問題となった業者はブラジル国内の出荷業者の1%にも満たない数だったのですが、ブラジル食肉業界にとっては大きなイメージダウンとなってしまいました。しかし、今回の問題をきっかけとした生産や流通システムの見直しや、官民揃ってのすばやい対応などにより、ほとんどの輸入国は3月中に21工場以外からの輸入を再開しました。そのため、鶏肉輸出量も回復し、2017年の輸出量は前年比0.4%の減少にとどまりました。

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国により異なる輸出部位

 日本向けは、前述の通り、タイでAIが確認されて以降急激に増加しました。ブラジルから日本へ輸出される鶏肉のほとんどが骨なしもも肉およびその角切りとなっています。また、近年は、日本でサラダチキンの流行に見られるように、むね肉の需要が高まっていることから、その引き合いも強まっています。
 日本以外の国では、表のとおり、中国や南アフリカ、サウジアラビアなどの中東地域にも多く輸出しています。それぞれ国ごとに輸出する部位には特徴があります。中国では、基本的にほとんどの部位を購入しますが、特にドラムスティックと呼ばれる骨付き肉やもみじと呼ばれる鳥の脚、手羽などが中国や香港に多く輸出されています。
 サウジアラビアやその他中東諸国では、通常よりも少し小さいサイズの丸鶏が好まれます。その重さはブラジル国内に流通しているサイズの半分程度である1kg前後であり、その丸鶏を半分に割って調理するのが主流だと言われています。

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今後も期待される輸出優位性

 世界最大級の鶏肉生産国であるブラジルの強みの一つは、さらなる増産が可能であるという点にあります。ブラジルは、飼料の7割を占めるトウモロコシの生産量も世界第3位であり、これが鶏肉産業を支えています。トウモロコシのさらなる増産も可能とされており、中西部のマットグロッソ州を中心に増産意欲が高まっています。ブラジル農牧食糧供給省が2017年に発表した農畜産物の長期予測では、トウモロコシの生産量は今後10年間で約3割増加し、それに伴い鶏肉生産量も同様に約3割増えると見込んでいます。
 また、冒頭でも記述したとおり、AIフリーであるというのが何よりの強みです。主要鶏肉輸出国であるタイやアメリカで発生が確認される中、ブラジルでは現在まで一度も発生が確認されていません。この要因について、一般的にはブラジルが渡り鳥の飛来ルートにほとんど含まれていないためであると言われています。AIに罹患する可能性がある渡り鳥は、主にアメリカから渡ってくるとされていますが、アメリカからカリブ海を抜けてブラジルまで南下してくることはまずないといわれています。その結果、中国をはじめとした多くの国が、AIが発生した国からブラジルへと調達先を切り替えるという事態が起こっており、今後の輸出量の伸びがさらに期待されています。世界各国でAIの発生が確認される中、ブラジル産鶏肉の存在感はますます高まっていくことでしょう。
(調査情報部 佐藤 宏樹)
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