【レポート】韓国の甘味料需給の動向
最終更新日:2018年7月4日
韓国料理は辛いものが多いというイメージが強いですが、実は日本人よりも甘い物好きなのではないかと思わせるほど韓国では甘味料の消費が旺盛です。統計によると、韓国の1人当たりの年間砂糖消費量は、約31 kgと、日本(約17 kg)の2倍近い値となっています。そこで、今回は身近な国でありながら意外に知られていない韓国の甘味料需給について紹介します。
原料作物がなくても砂糖ができる!?
韓国では、原料作物であるサトウキビやてん菜が国内で栽培されていません。このため、同国の製糖業者は海外から輸入した粗糖(※1) を国内で精製して砂糖を供給しています。近年は、「韓国産の砂糖は安心・安全」というイメージを持つ中国本土や香港のバイヤーからの引き合いが強く、生産量の4分の1が輸出に仕向けられています。
海外からの粗糖の輸入および海外への砂糖の輸出を効率的に行うため、3社ある製糖業者の工場はいずれも、大型タンカーが接岸できる貿易港近くに立地しています。
※1: 粗糖は、砂糖の原料で、サトウキビの搾り汁から糖みつを分離して結晶化したもの。
砂糖の家庭消費
韓国の家庭では、砂糖は浸透圧を利用して果物や野菜からエキスを抽出するために使われることが多いようです。梅エキスは、料理に酸味とコクをプラスする調味料として使うほか、水などで割ってジュースとして飲みます。近年は、女性の社会進出などで梅エキスを手作りする家庭が少なくなっていることから、家庭での砂糖消費も減少傾向にあります。ただし、食品製造業者や飲食店など業務用に供給される砂糖の割合が増えていることから、加工食品や外食を通じた砂糖の消費は増加傾向にあります。
家庭では砂糖より水あめが主役
韓国では、食材が乏しくなる冬を乗り切るため、地域に住む人たちが共同でキムチを作り、互いに分かち合う慣習があります。こうした慣習がそこで生きる人々のアイデンティティーの形成に深く関わっていると認められ、2013 年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
キムチ作りでは、トウガラシと並び「水あめ」が欠かせない調味料として扱われています。水あめはトウモロコシを原料に作られる甘味料で、サラサラとした液体であるため砂糖より扱いやすく、照りを出したり、香りや辛みを引き立たせたりするために用いられます。また、キムチとともに韓国を代表する発酵食品で、家庭で作られることが多い「コチュジャン」も、同じ理由で水あめが用いられます。このため、スーパーマーケットなどでは通年、さまざまな種類の水あめが商品棚に並んでいます。
拡大する代替甘味料市場
韓国では、成人の3人に1人が「肥満」とされ、これによる経済的・社会的な損失が年間6兆ウォン(約6000 億円)を超えると試算されています。肥満増加の背景には、1人世帯・共働き世帯の増加など社会環境の変化から食生活が乱れがちになっていることに加え、熾し烈れつを極める受験戦争による影響で運動習慣が身に付いていない人が多いことが指摘されています。このため、韓国政府は2016年4月、肥満予防対策として、2020年までに加工食品(牛乳を除く)から摂取する糖類(※2)の量を、1日の総摂取エネルギー量の10 %以下に抑える計画を発表しました。平均的な成人の場合、1日に摂取できる糖類の量は、砂糖のカロリー換算で50 gに相当します。
※2: 糖類には、砂糖や水あめのほか、ハチミツ、メープルシロップなども含まれる。
製糖業者は、計画が発表される以前から消費者ニーズを敏感に感じ取り、砂糖や水あめに代わる甘味料の開発に力を注いできました。すでに、砂糖と比べ低カロリーで糖の吸収を抑える効果があるとされるキシロース、タガトース、プシコースなど機能性甘味料を販売しています。2016年の機能性甘味料の市場規模は120億ウォン(約12 億円)と2年前と比べ2倍に成長しています。
※100ウォン= 10 円で換算
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