【alicセミナー「ベトナムの野菜の生産、流通および輸出の現状」
最終更新日:2018年7月4日
これまで日本の野菜輸入は中国に大きく依存していましたが、同国の食品安全問題や人件費の上昇などを背景として、近年では中国への一極集中を回避し、野菜の安定的な供給国として東南アジアにリスクを分散する日本企業の動きが顕著になってきています。
alicの調査情報部では、近隣諸国に比べ安価な人件費に期待した外資の進出が相次いでいるベトナムの野菜の生産、流通および輸出の現状を同部青沼悠平から、また、日本が輸入する冷凍えだまめの約4割を占め、地理的優位性と徹底した品質管理も相まって、日本のえだまめ市場において非常に重要な位置付けとなっている台湾のえだまめの生産、流通および輸出の現状を同部山下佳佑と野菜需給部伴加奈子から、それぞれ平成30 年5月11 日(金)のalic セミナーで報告をしました。本稿ではベトナムの野菜の生産、流通および輸出の現状の報告の概要を紹介します。
※台湾のえだまめの生産、流通および輸出の現状については、本誌8頁レポート「台湾のえだまめの生産動向」をご覧ください。
野菜生産が大幅に増加
ベトナムの最近5年間の人口は都市部を中心に毎年97 万人程度増加し、2015年の平均年齢は29.6歳と日本の46.5歳に比べ大幅に若く、若年層の占める割合が高いという背景もあって食品全体の消費量が増加しています。同時に、野菜の作付面積、生産量ともに増加しており、2016年の野菜の作付面積は、90 万ha 、生産量は1597万5000tと、2 004年に比べてそれぞれ46.1%増、80.2%増と、いずれも大幅に増加しています。
日本のベトナムからの野菜輸入量は、おおむね増加傾向で推移しており、2017年は2万462 3tで、このうち冷凍野菜が43 .5%を占めています(冷凍かんしょを含めると65.2%)。
主要供給産地ダラット高原
現在、日本向けの野菜が生産、加工、輸出されている主な産地は、温度、日照量ともに野菜の生産に適している中部高原地域のダラット市(ダラット高原)です。ベトナム版GAPによる管理を行う協同組合もあり、ベトナム国内でもダラット高原産の野菜は他産地と比べて約1.5倍の高値で取引され、ブランド野菜として認知されています。
今後期待される新たな加工野菜供給地
一方で、紅河デルタ地域や北中部・中部沿岸地域などのベトナム国内の他地域も地理的、気候的環境が多様なため多種類の野菜の周年供給が可能です。また、肥沃な土壌や未利用地、隣国のタイや中国と比べて安い人件費など、ダラット高原以外の地域も、野菜を生産する上で有利な点が多くあります。
ただ、これらの地域には課題もあります。ベトナム国内に供給される野菜は、残留農薬問題や産地偽装など食品安全に関する問題が頻発しており、日本の厳格な品質基準をクリアできる加工施設は、契約生産者に対する食品安全の指導・監督が行き届いたダラット高原に限られているのが実情です。
しかしながら原料調達という意味での潜在能力は高いため、特に、紅河デルタ地域のハイズオン省は日系企業も野菜の新たな調達先として注目しています。品質や食品安全の改善が見られれば、これらの地域が「ポストダラット」として加工野菜の新規供給地となる可能性が充分にあるとみています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196