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【第一線から】肉牛経営の持続的発展に向けた創意工夫〜北の大地で育む羽田野親子のこだわり〜

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最終更新日:2018年11月7日

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 旭川空港から北へ約100kmの所にある北海道美深町(びふかちょう)は、町内を南北にかけ天塩川(てしおがわ)が流れ、町内の大半は森林という美しく自然豊かな町です。主な産業は、広大な自然を生かした農林業であり、近年では町の振興事業として、チョウザメの養殖に取組んでいます。
 その美深町で高品質な肉用牛を生産する羽田野安晴(はたのやすはる)さん・敬仁(よしひと)さん親子を紹介します。

親子2代に渡る生産体制

 父の安晴さんと(有)羽田野畜産の代表でもある息子の敬仁さんは、主にホルスタイン種(乳用種) などの雄牛を約2800頭飼養しています。親子でも経営体制は別であり、安晴さんは生後2カ月齢以内の初生牛(しょせいぎゅう)を北海道内の家畜取引市場などから購入後、生後6 〜7カ月齢まで育てる育成農家を営んでいます。飼養頭数は2300頭で、月250頭程を(有)羽田野畜産を含む道内外の肥育経営者(※1)に直接または市場を通じて出荷しています。
 一方、息子の敬仁さんは肥育経営を営んでいます。肥育頭数は5 00頭程ですが、昨今の素牛価格の高騰の影響もあり、「この先は肥育経営だけでは生き抜いていけない」と考え、繁殖基盤の強化(繁殖・肥育の一貫経営)にも取り組んでいます。

(※1)素牛(子牛)を購入・肥育し食用として出荷する生産者
 

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美深牛生産グループの一員として

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 敬仁さんは、「安心安全な良いものを生産したい」との信念で、平成18 年に美深町内の肥育経営者と共に、地元のブランド「美深牛」の立ち上げに携わり、生産グループの一員として、飼養管理を徹底し、品質を吟味しながら美深牛を育成しています。美深牛はその名のとおり、美深町内で生産された乳用種の雄牛を指し、粗飼料(※2) は、自家生産を含む道内産の牧草のみを使用、配合飼料は、抗生物質等を一切添加していないものにこだわり肥育されています。
 また、徹底した牛の体調管理や牛舎の衛生管理、美深町のミネラル豊富な水で生産された美深牛は、高品質な肉質を誇り、消費者に親しまれています。

(※2 )家畜に与える飼料のうち草そのものや草からつくられた飼料のこと
 

多様な資金調達方法

 「畜産経営は多額の資金が必要となる。牛や飼料の購入、牛舎などの施設維持・拡大などにかかる資金確保のために、さまざまな手法を活用している。」と話す羽田野さん親子は、中でも生産コストの最も高いウエイトを占める牛の購入資金について、金融機関などのさまざまな資金調達制度を利用しています。そのひとつが「動産担保融資(Asset- based Lending 略称ABL)です。これは牛そのものを担保に融資を受ける仕組みであり、1頭1頭の徹底した飼養管理が求められます。このため、ABLで購入した牛は牛舎単位で振り分け、耳標の色を変えるなど、個体管理を工夫しています。
 

多くの意見に耳を傾けること

 また、羽田野さん親子は、AB Lを利用するにあたって、取引先金融機関等に経営状況を全て公開しています。  これについて敬仁さんは「多くの人にみてもらい、その意見を柔軟に受けとめることで、自分1人の考え方だけでなく、多面的に物事を考えることが可能になり、色々な人の力、知恵を借りて経営を行える。」とプラスに受けとめています。また、自身について「周りに見られているからこそ緊張感を保て、しっかりしなければならない。指摘を受けたら悪いところは直すという素直さが良い方向へと導く。」と話し、こうした敬仁さんの誠実で温和な人柄が関係者との強い信頼関係を生み、安定した経営の下支えとなっています。

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美深町内で思い描く未来

 羽田野さん親子は今後、黒毛和種の繁殖に力を注いでいきたいと考えています。敬仁さんは「将来美深町内で同じように黒毛和種の繁殖に取り組む農家とグループを結成し、高品質の子牛を生産・出荷することで、市況に左右されることなく、安定した固定客との相対取引が実現できるのではないか」と常に先を見据えています。 (畜産振興部)
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