消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 広報誌 > 【レポート】ミャンマーの鶏肉の生産、流通動向

【レポート】ミャンマーの鶏肉の生産、流通動向

印刷ページ

最終更新日:2019年1月9日

 ミャンマーでは、2011年の民政移管により、民主化と経済改革が推進されたことで、国民の所得水準が向上しつつあり、それに伴い、食肉の消費量が増えています。
 家きん(※1)肉は、牛肉や豚肉と比べて安価であることに加え、最近は、外資系ファストフードチェーンの進出などもあり、食事の機会が増加しています。
 今回は、同国の家きん肉、特に鶏肉をめぐる状況を報告します。

 (※1 )家で飼う鳥の総称。特に肉・卵をとる目的で飼うもの。
 

鶏肉生産量は右肩上がり

 ミャンマーの家きんの飼養羽数は、食肉需要の拡大に対応して増加しており、このうち9割以上を鶏が占めています。鶏肉の生産量もこれに連動して増加しています。
 ミャンマーの肉用鶏には、ブロイラー(外国鶏の品種)や地鶏(主に全国各地の村で飼養されている在来種)のほか、卵用鶏の雄、採卵鶏の廃鶏が含まれます。
 地鶏は、様々な系統があり農家の庭先で飼養されています。消費者は、肉の締まりや味が良いとして、ブロイラー以外の鶏肉を好む傾向があり、価格も高いとのことです。
 鶏は全国各地で生産されており、各地域で消費される鶏肉の供給は、その地域の農家が担う、いわゆる地産地消型の生産・消費構造となっています。
 そのため、人口が多く、かつ都市部に住む割合(都市化率)の高い地域、つまり消費地に近づくほど飼養羽数が増加する傾向にあります。
 

レポ1-2

ミャンマーの肉用鶏の飼養方法

 市場までの距離が遠いミャンマー農村部の零細・小規模農家では、庭先で地鶏を放し飼いにしていることがほとんどです。
中規模農家は、市場出荷を目的とした商業的な生産で、高床式の開放型木造鶏舎などを保有し、そこでブロイラーなどを飼養している農家もいます。
 大規模農家としては、最近、外資系の養鶏企業の進出が相次いでいます。大規模の場合、期待できる収益も高いですが、多額の資本投入だけでなく飼養管理技術や疾病への対策などが必要になります。
 また、ヤンゴン地域やマンダレー地域(特に水資源の潤沢な北部の農家)では、養鶏・養魚の複合経営も多く見られます。鶏舎が養魚池の上に設置されており、鶏の糞は魚のエサとして養魚池に自然落下する仕組みとなっています。
 

熱帯種

アンガス

生体での流通が一般的

レポ1-1

  零細・小規模農家は、生産した鶏を自宅で消費するか、流通業者を介して地元の市場に出荷することがほとんどです。中規模以上の農家は、流通業者や卸売業者などに出荷しています。
  肉用鶏の出荷量の半分は、鶏肉加工品として量販店やレストランに、残りの半分は生きた鶏として、市民が食料品などの生活必需品を購入する伝統市場に供給されています。ミャンマーでは、伝統的に常温肉は新鮮、冷蔵・冷凍品は新鮮ではないというイメージが定着しており、伝統市場で処理直後の常温肉を好む傾向があります。
 

今後さらなる発展も

  ミャンマーの肉用鶏産業は、旺盛な食肉需要を背景に伸び盛りの分野であると言えます。
しかし、長く続いた経済制裁が解除されてからの日が浅く、鶏肉の品質も高くはないため、まだ隣国タイのような輸出産業にはなっていません。
  ただし、飼料が国内でまかなえることや、労働力が豊富であること、外資の投資環境が安定化していることなど今後の発展に有利な点も多くあります。
  また、経済発展が続けばさらに食肉需要が高まることが予想され、外資系の養鶏企業の参入が進めば、後発開発途上国向け特恵関税(※2)を利用した輸出も視野に入れた発展が起こる可能性もあり、同国の肉用鶏産業の今後の動向が注目されます。

(※2 )開発途上国(後発含む)の輸出所得の増大等を図るため、一定の農水産品などに対し、一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)を適用する制度。
(※3 )為替レートはミャンマーチャット=0・07円(8月末日参考相場:0・073円)を使用した。
前のページ         次のページ
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196