【alicセミナー】次世代を担う若手農業者の姿〜食料・農業・農村の動向報告より〜
最終更新日:2019年1月9日
alicでは、業務を通じて得られた情報や、これらに関連する様々な情報を広く国民の方々に知っていただけるよう社会的発信の充実に取り組んでおり、その一環として「alicセミナー」を開催しています。
農業においては担い手の高齢化や減少が課題となっています。農業の持続的発展には、次世代を担う若手農業者が、付加価値の向上、規模拡大や投資を通じた生産性の向上に挑戦し、効率的かつ安定的な農業経営を実現していくことが重要です。
そこで、今回のalicセミナーでは、平成30 年5月に国会に提出された「食料・農業・農村の動向」に関する報告を担当されている、農林水産省大臣官房広報評価課情報分析室長の伊佐寛(いさひろし)氏を講師にお招きし、本報告の中で特集された49 歳以下の若手農業者の経営構造の特徴、農業経営に対する考えなどについて、農林業センサスなどの統計データやWebアンケートに基づきご講演いただきましたので、その概要を紹介します。
今回の若手農業者に対するアンケートの回答者数は1,885名で、Webによるアンケート実施や若手農業者の農業経営に対する考えをまとめたものはこれまでも他にあまり例がなく、日頃、営農指導員などの現場の者が、農業者と接して感じていたことが具体的な数字となって表れた、わかりやすい結果になったと考えています。
規模拡大を進める若手農家
販売農家のうち、若手農家(平成29 年10 月1日時点で49 歳以下の農業者)は1割程度に過ぎませんが、若手農家は非若手農家よりも経営規模が大きく、規模拡大が進んでいます(図1)。
また、規模拡大に必要な労働力を確保するため常雇いを雇い入れた若手農家の割合が増加しており、さらに労働時間短縮のための機械や施設への投資を進め、規模拡大や農業所得の向上につなげていると考えられます。(図2)
若手農業者への農業や経営に関するアンケート結果
若手農業者に農業の在り方を尋ねたところ、35.1%の方が「海外にも目を向けるべき」と答え、肉用牛の生産者ではこう回答した割合が半数を超えました。また、経営課題については「労働力の不足」がトップで、いずれの品目でも上位回答に挙がりました。
農業の魅力を尋ねたところ、裁量や時間の自由度の大きさを挙げる方が半数近くでしたが、法人雇用者に限ってみると「自然や動物相手の仕事」がトップであり、雇用者と被雇用者では傾向が変わることがわかりました。経営で大切なことについてのトップ回答は「経営分析能力(59.0%)」で、「栽培・飼養技術(5 0.6%)」を上回りました。
今後伸ばしていきたい方向については、販売金額が大きいほど割合が高くなるのは「IoT(※)等新技術の導入」と「異業種との交流」でした(図3)。他には、「単収の向上」、「消費者への直接販売」、「農産物の加工・販売」の回答が多く、また、1,000万円を境に収入が増えるほど農業経営の法人化を考える傾向があります。
(※ )IoT…Internet of Things の略。「モノのインターネット」のことで、世の中に存在する様々なモノがインターネットに接続され、相互に情報をやり取りして、自動認識や自動制御、遠隔操作などを行うこと。
効率的かつ安定的な農業経営に向けた施策の展開方向
こうした若手農業者の経営構造の分析やアンケート結果を通じ、効率的かつ安定的な農業経営の育成に向け、農業経営の法人化やIoTロボット、ドローンなどを取り入れた革新的な技術開発や、農産物の流通・加工・販売の構造改革等の農業競争力強化プログラムの着実な実施を進めるなど、農業者が今後伸ばしていきたい方向を後押しできる環境作りが重要であることが確認されました。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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