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【alicセミナー】 「米国の牛内臓肉の生産・輸出動向〜タン・ハラミを中心に」「アルゼンチンの牛肉生産・輸出事情〜パタゴニア地域を中心に〜」

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最終更新日:2019年3月6日

 alicの調査情報部では、最新の農畜産物の需給状況などを把握するため、海外調査を実施しています。平成30 年12 月20 日(木) に開催したalicセミナーにおいて、世界最大級の供給力を持ち、輸出の日本向けのシェアが最大である米国の牛内臓肉と、平成30 年6月末に日本向けの輸出が一部の地域で解禁となったアルゼンチン牛肉の生産・輸出動向に関する調査結果を報告しましたので、その概要を紹介します。

牛内臓肉生産大国である米国の対日輸出

セミ1

 米国の牛内臓肉の中でも日本からの引き合いが強いタン・ハラミの需要の現状と今後の見通しを、調査情報部野田圭介より報告しました。
 米国は牛肉の生産大国ですが、牛内臓肉の国内需要は低いため、その大半を輸出に仕向けています。中でもタン・ハラミ等の対日輸出は収益性が高く、日本は重要な市場とされています。
 日本におけるタンやハラミの中心的な消費形態に焼肉が挙げられますが、特に昨今の肉ブームを背景とした焼肉需要増により、対日輸出が増加傾向にあります。さらに、近年は日本食ブームを背景にアジア市場における日本式焼肉などの新たな需要も拡大しています。
 
 米国の牛飼養頭数は過去最高水準にあり、牛内臓肉の供給量も短期的には増加傾向で推移すると考えられます。その一方で、食肉処理業務の多くを移民労働者に依存している米国では、トランプ政権の移民規制強化により、今後、内臓肉製造のキャパシティにも影響を及ぼす懸念があります。
 米国の内臓肉価格については、前述のアジア市場での新たな需要に加え、近年は内臓肉の食文化を有する国からの移民の増加によって、米国内の市場も広がりつつあり、こうした需要増によって今後上昇することも考えられます。
 もはや日本の焼肉に欠かせない存在となったタンやハラミ。その最大の輸入先である米国の供給力や他国の需要動向に、今後も注視する必要があります。
 

セミ2

セミ3

対日輸出解禁後のアルゼンチン牛肉の輸出拡大可能性は?

 2018年3月22 日に政府間合意に達し、6月27 日に日本向け輸出に関する衛生条件が締結され、日本への実際の輸出が開始されたアルゼンチン(パタゴニア地域) 牛肉の日本への輸出拡大の可能性について、調査情報部佐藤宏樹より報告しました。
 アルゼンチン全体の牛肉生産および輸出量は近年増加傾向で推移し、2017年は生産量が世界第6位、輸出量が第10 位となっています。特に輸出は、中国の旺盛な需要などを背景に今後も増加が見込まれます。また、アルゼンチン国内の口蹄疫ワクチン非接種清浄地域(口蹄疫のワクチンを接種せずに、口蹄疫の発生がなくなったと認定された地域)であるパタゴニア地域の対日輸出が解禁されたことから、現在日本では同国産牛肉への注目が高まっています。
 

セミナー4

セミナー5

うし

 しかしパタゴニア地域は、干ばつの影響で牧草の生育状態の悪化や飼料となる穀物の生産量が減少しており、こうした気候的ハンディキャップや飼養技術の未熟さなどから生産量自体が少なく、急激な輸出拡大は見込めないとみられます。また、アルゼンチンでは「小さい牛ほどおいしい」と考えられているため、輸出に仕向けられる比較的大きな牛の生体でも450 kg 以上とされ、日本の肉専用種の平均出荷体重760 kg と比べるとかなり小さいことがわかります。
 輸出向けにまとまった頭数の牛を集められないという大きな問題を解決しない限りは、アルゼンチン牛肉が日本の牛肉市場に与える影響は極めて小さいといえます。アルゼンチン側としても、輸出量の増加という直接的な側面よりも、日本への輸出が認められたということによるブランド力の向上や、将来的にはアルゼンチンの他地域解禁への足がかりとなる可能性など、間接的な側面での効果を期待しています。
 
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