【レポート】チーズの輸出拡大に期待するメキシコの酪農・乳業
最終更新日:2019年11月6日
知られざるメキシコ伝統チーズ
スイスのラクレットチーズやオランダのゴーダチーズなど、チーズといえばヨーロッパの国々をイメージされる方も多いのではないでしょうか。しかし、チーズはメキシコでも重要な食材の一つとして古くから親しまれ、メキシコを代表する料理の一つでもあるタコスに挟んだり、肉料理に添えたりと、今日のメキシコ料理にも欠かせない存在となっています。
メキシコでは特色あるチーズ作りも盛んに行われており、例えばパネラチーズやオアハカチーズは、どちらもメキシコを代表する伝統チーズです。いずれも熟成期間を持たせず、淡泊な味わいで、特に、南部の小規模・零細酪農家を中心に生産されてきたオアハカチーズは、細く伸ばしたものを毛糸玉状に丸めるというユニークな製法で生産されており、その食感は日本でもスナック感覚で消費されている「割いて食べるチーズ(ストリングチーズ)」にも似ているといわれています(写真1)。本稿では、チーズを中心に、メキシコの酪農・乳業の現状を報告します。
生産量は増加傾向で推移
メキシコの1人当たり年間チーズ消費量は4.0kgであり、2.4kgの日本を大幅に上回っています。国産チーズのほとんどは国内で消費され、不足分を輸入で補っています。また、牛乳・乳製品市場では飲用乳に次ぐ高付加価値商品であることから、乳業メーカーにとってもチーズは重要品目の一つに位置付けられています。近年は、中間所得層の増加を背景とする消費量の増加から増産傾向にあります(図1)。
北部には大規模酪農場も
メキシコでは近年、チーズの原料となる生乳の生産量も増加傾向にあります。国内酪農家のうち9割を占める小規模経営体は南部地域を中心に分布していますが、西部中央地域や北部の高原地域には比較的大規模な経営体も多く、大手乳業メーカーの生乳調達を支えています(図2)。
現地調査ではメキシコ第2位の生乳生産州で、近年一大酪農地帯に成長している高原地域のコアウイラ州の超大規模酪農場を訪れました。調査した超大規模酪農場では1万7000頭の搾乳牛を含む合計3万3000頭を飼養しており、80頭を収容するロータリーパーラー(回転式搾乳施設)3基は24時間稼働しているとのことでした(写真2、3)。
乳業メーカーは輸出拡大に期待
同州に本社を構えるララ社は、飲用乳では第1位、チーズでは第2位の市場シェアを誇り、メキシコにおける大手乳業メーカーの一つに数えられます。もともとは、地元の酪農家が組織した酪農協でしたが、今日では米国やブラジルにも工場を所有する大手となっています(図3、写真4)。
このような大手乳業メーカーは現在、オアハカチーズをはじめとする伝統的特産チーズで差別化を図ることができると考え、輸出への関心を高めています。メキシコ料理が国際的にも認知度を上げている中、現地業界関係者からは、TPP11加盟国の中でも高価格販売が期待できる日本市場に期待を抱いている様子がうかがわれました。
調査情報部 野田 圭介
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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