【第一線から】ハラール認証(注1)を受けたてん菜糖〜日本甜菜(てんさい)製糖株式会社の取り組み〜
最終更新日:2020年3月4日
砂糖の原料であるてん菜(ビート)は北海道の畑作農家の輪作(りんさく)体系(ほ場の土壌劣化を防ぐため、異なる種類の作物を一定の順序で栽培すること)を維持する上で重要な作物です。また、それを原料として砂糖(てん菜糖)を製造するてん菜糖業は地域の経済に貢献する役割を担っています。
今回は、2016年11月14日に商品名「ビートグラニュ糖HB」でハラール認証を取得した日本甜菜(てんさい)製糖株式会社の取り組みについて紹介します。
(注1)イスラム教の戒律に則って調理・製造された商品であることを証する制度。
取得のきっかけ
近年日本を訪れる海外の方々が増加するのに伴い、アジア圏などのイスラーム信徒の方の来日も増えており、日本国内でもハラール認証に注目が集まっています。
こうした中で、イスラーム信徒の方が安心して食べられる商品の開発や輸出を考える食品メーカーから、原材料として、ハラール認証された砂糖を使いたいとの要望があったことを契機に、同社では認証の取得を目指すこととなりました。
取得までの苦労
日本国内にハラール認証の機関は複数ありますが、同社の美幌(びほろ)製糖所は、日本ムスリム協会による認証取得を目指しました。
審査は書類審査と現場審査があり、協会の審査員が隅々まで確認を行い、問題がなければ認証となりますが、認証後も年に一度は定期的な審査が行われます。
認証取得にはイスラームにおけるハラール(合法な)食品とハラーム(非合法な・禁忌)食品を厳格に区別する必要があり、ハラームであるものについては、使用はもちろん、接触も禁じられています。
そのため、製造に使用する原材料や加工助剤(注2)、製造設備や保管に至るまで、ハラールであることが求められます。
(注2)加工工程で使用されるものの、中和・除去され、最終製品にはほとんど残らない食品添加物。
原料となるてん菜は、一般的には毒性や中毒性を有しない植物であるため問題はありませんでした。
しかし、加工助剤の場合、一部を変更しただけでも砂糖の品質などへの影響が想定されたため、製造会社に問い合わせ、豚やイスラーム法で定められた方法で屠(と)畜されていない牛に由来するなど、ハラームとされる全ての物が使用されていないことの確認をして、ハラームがあった場合には代替品の検証に細心の注意を払いました。
美幌製糖所
今後の目標
2019年11月に実施された認証後の審査では、審査員が来所し、原料受入の現場にはじまり、製造の各工程や製品保管の状況などのチェックが行われました。
審査の中で審査員から強調されたのは、「ハラール製品製造工場であることを場内の各所に掲げ、ハラール製品を扱っていることを従業員のみならず、取引先や関係業者、来訪者などに認識してもらうことが大切」ということであったそうです。認証取得後も、ハラール認証工場としての日々の研鑽(けんさん)が続いています。
最近はハラール認証を取得した砂糖を原材料として使用したいとの問い合わせが多くなっており、同社としても国内のイスラーム信徒の方やイスラーム圏への輸出向けの食品の原材料として、今後販売を広げていきたいと考えています。
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