【第一線から】サトウキビ生産と肉用子牛生産で耕畜連携を実現 !鹿児島県知名(ちな)町 三原 利昭(みはら としあき)氏
最終更新日:2020年11月4日
サトウキビの収穫作業をする三原さん
沖永良部(おきのえらぶ)島という島をご存じでしょうか。鹿児島県に属していますが、九州本土より沖縄県の本島に近く、温暖な気候を生かしてサトウキビ生産が盛んな島です。今回は、そんな沖永良部島の知名町でサトウキビ生産と肉用子牛の飼養で耕畜連携を行う三原利昭さんの取組を紹介します。
三原さんは約20年前からサトウキビと肉用子牛生産の複合経営を行っています。三原さんご夫婦が450aのほ場でサトウキビの生産を行い、息子さんご夫婦が子牛と母牛の飼養管理を行っています。牛の飼養管理で発生する牛ふんを利用した堆肥をサトウキビのほ場に散布し、徹底した土づくりに取り組むことで、サトウキビ生産の高単収を実現しています。平成29年産においては、鹿児島県全体の単収5、346kg/10a(※1)に対して、三原さんは10、500kg/10aでした。こうした実績が評価され、平成30年度さとうきび生産改善共励会の「農家の部」において、独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を受賞されました。
(※1)鹿児島県農政部農産園芸課「平成29年産 さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」より
高単収のためにこだわるのは?「土づくり」
賞を受賞するほど高単収なサトウキビ生産を実現している三原さんが、肥培管理作業の中でも特に力を入れているが土づくりです。三原さんはこの土づくりのために、ほ場に自家製堆肥を散布していますが、この堆肥はどのように作られているのでしょうか。
自分の納得できる堆肥をつくる
堆肥の原料は牛ふんと敷料(しきりょう。牛の寝床に敷くもの)、牧草などの飼料残渣(ざんさ)です。敷料はバガス(※2)とハカマ(※3)を混ぜたもので、バガスは製糖会社から購入し、ハカマは自家のサトウキビ畑で生じたものを利用します。
牛ふんと敷料は堆肥舎で発酵させることで堆肥化を行います。一般的に、牛ふんのみでは堆肥づくりに有用な微生物が活動しきれないことがあるため、さまざまな副資材を投入しますが、三原さんの堆肥は牛ふんに大量の敷料を混ぜ込むことで微生物が活動しやすい環境となり、副資材の追加が特に必要ありません。むらなく発酵が進むよう2〜3カ月に1度全体を混ぜる作業を3〜4回行ったところで堆肥が完成します。
(※2)サトウキビから砂糖を搾った後の残りかす。
(※3)サトウキビの収穫残渣。
自慢の堆肥の効果
多くの生産者が悩まされる梅雨明け後の干ばつ時、三原さんのほ場では他のほ場よりも青々としたサトウキビが生育しています。これは三原さんのこだわりの堆肥の散布によりほ場の保水性が改善されている証拠だといえます。また、自家製堆肥を散布することで化成肥料購入費の削減にもつながっています。
このように、三原さんは土づくりをしっかり行うことで、作土層(植物の生育に適した土)が浅く保水性に乏しい沖永良部島の土壌でも高単収を収めることに成功しています。
これからの展望
三原さんは、今後も耕畜連携によるサトウキビほ場の土づくりを重視し、単収向上による生産量の確保をしていくとおっしゃります。また、地域の耕作放棄地の増加を防ぐため、サトウキビ生産を拡大して地域貢献にも努めていきたいとのことです。
サトウキビの生産者を支える価格安定制度
国内産糖と輸入粗糖を原料として製造される砂糖には大幅な内外価格差があるため、alicでは、サトウキビの生産者や国内の甘しゃ糖(サトウキビから作られる砂糖)製造事業者に支援を行うことで内外価格差の解消を図っています。
【お詫び】
広報誌「alic」11月号の冊子において、当該記事の記載に誤りがありました。
読者の皆様ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げますとともに、以下の通り訂正いたします。
〇9頁1段7行目について
【誤】鹿児島県農→【正】鹿児島県農政部農産園芸課
〇8頁2段13行目〜9頁2段17行目までの注釈について
(※2)から始まっており、(※1)がございませんでした。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196