【海外情報】でん粉から作られる世界のスイーツの数々
最終更新日:2021年6月2日
でん粉は、水あめ、ぶどう糖などの甘味料の原料になるほか、熱を加えてのり状にする(糊化)と、粘性、弾力性、保水性などのさまざまな特性を持つようになることから、菓子類のほか清涼飲料水や麺類などの食品から、製紙、医薬品まで幅広い製品に使われており、私たちの生活に欠かせない存在となっています。
世界のでん粉生産量は近年増加傾向にあり、2019年の世界のでん粉生産量は、4398万t(2009年比35・2%増)と10年前と比べ大幅に増加しています。このうち、コーンスターチが全体の約44%と最も多く、次いで、化工でん粉(注1)とタピオカでん粉がともに約21%、小麦でん粉が約7%、ばれいしょでん粉が約4%となっています。
今回は、でん粉ならではのもちもちとした食感が楽しめる世界のスイーツを3つご紹介します。
(注1)化工でん粉とは、天然でん粉(native starch)を原料に、化学的な加工を施すことで機能を高めたもので、英語ではmodified starchと言います。
まず、見た目にもきれいなトルコの伝統的なお菓子「ロクム」。世界では“ターキッシュデライト(トルコの喜び)≠ニいう名前で広く知られているお菓子です。15世紀頃にオスマン帝国の宮廷で出されるようになったことが始まりと言われています。当時は宮殿で皇帝たちに供されるいわば宮廷スイーツで、贅沢な砂糖菓子のひとつだったそうです。今では、食後のトルココーヒーやチャイとともに「ロクム」を添えて出すレストランやカフェもあり、日本のお茶請けのような一品として、トルコでは馴染み深いお菓子です。
次に、フランス発祥といわれている伝統あるスイーツのブラマンジェについて紹介します(写真3)。ブラマンジェはフランス語で白い食べ物の意で、ゼラチンをゲル化剤としアーモンドミルクを用いるフランス風のブラマンジェと、コーンスターチに砂糖・牛乳を加えて作るイギリス風のブラマンジェ(コーンスターチプディング)の2種があります。イギリス風のブラマンジェは、身近な素材を用いて家庭で簡単に作ることのできる代表的な冷菓といえます。作り方は、コーンスターチと砂糖を混ぜ、牛乳を少しずつ加えて、ダマのないように溶き伸ばし撹拌しながら加熱します。コーンスターチは糊化する温度が96度と高く、糊化されると粘弾性のある、求肥に似た食感が得られます。
最後に、最近メディアで取り上げられることが多く、でん粉由来のスイーツとしてタピオカの次に日本で流行するのではないか、といわれている台湾カステラを紹介します。台湾カステラとは、もともと台北市近郊の淡水名物だった台湾式のスポンジケーキのことです(写真4)。ふわふわプルプルで、口の中に入れると空気を多く含んでいるためシュワっと消えていくような食感が特徴です。日本のカステラと比べて、ふわふわとして、きめ細かい生地のため、焼き立てを揺らすと、プルプルと揺れるほど柔らかいです。通常であれば、そのような柔らかさやふくらみは、冷めると同時にしぼんでしまうのですが、焼き上がり後もその状態を持続させるために、原材料にでん粉が使われています。カステラの生地を混ぜ合わせた際にできるでん粉の架橋構造(注2)こそが、焼き上がり後の特徴的な食感を維持するために役立っています。
(注2)でん粉の分子内または分子間の水酸基が橋を架けたように結合すること。これにより、弾力などの新たな特徴が現れます。
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