チョコレートや飴、コーヒーなど、「GABA」を含む食品が最近増えています。GABAは英語のGamma-Amino Butyric Acidの頭文字をとった略称で、その正体は、γ(ガンマ)?アミノ酪酸というアミノ酸の一種です。GABAには血圧降下作用や抗ストレス作用があることが報告されているため、人の健康増進に貢献する栄養機能性成分のひとつとして注目されています。お仕事中、ちょっと疲れを感じた時や一息つきたいときなどに、GABA入り食品を利用している方も多いのではないでしょうか。
お菓子や加工食品だけでなく、高GABA農産物にも注目が集まっています。今回は、国内で初めてゲノム編集食品として公表された「GABA高蓄積トマト」をご紹介します。
トマトは他の野菜や果物よりGABA含有量が多いのですが、血圧上昇抑制効果を得るにはかなりの数のトマトを食べなければなりません。そこで、ゲノム編集という技術を活用し、トマトにGABAを蓄積させます。ゲノム編集と聞くと、難しくて特殊な技術をイメージしますが、品種改良技術のひとつです。ゲノム編集は、自然界で誘発されうる変異を人為的に再現する品種改良技術の一種です。農作物が既に持っている遺伝子をピンポイントで書き換え、その遺伝的機能を調節することにより、栄養機能性を高めたい、新しい病害虫に対する抵抗性を高めたい、高温時期の着果を安定させたいなどのさまざまなニーズに応えることができます。また、通常の品種改良よりも迅速に開発できるという特徴があります。高血圧や糖尿病といった生活習慣病や、ストレス過多な生活を送る人などが増加し、食を通した健康維持・増進が大きな社会的テーマになっている中、GABA高蓄積トマトはこうしたニーズに即して開発されました。
ゲノム編集食品については、流通させる前に、開発者が厚生労働省に事前相談し、遺伝子の変化が自然界や従来の育種技術でも起こっている範囲内のものと同等と判断された場合は、同省に届出を行います。そしてその目的は私たちの身近にある課題や要望に応えるものであり、この新しい技術について、生産者、流通・加工業者、消費者の理解を得ていくことが大切です。
ゲノム編集のような最先端技術を活用して、私たちの健康増進につながる農産物が今後も開発され実用化されていく。GABA高蓄積トマトの開発事例がその第一歩として注目されています。
詳細はこちら→野菜情報2020年1月号「
ゲノム編集食品の動向と高GABAトマトの開発・実用化について」