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【REPORT】世界最大の鶏肉輸出国 ブラジルの鶏肉事情

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最終更新日:2021年8月4日

 ブラジルの農業というと伝統的な農産物としてコーヒーや砂糖が挙げられますが、近年では大豆やトウモロコシなどの穀物や牛肉、鶏肉などの食肉の生産が増え、多様な農業が展開されており、農業大国として世界の農畜産物需給に大きな影響を及ぼしています。このように農業の拡大、多様化が図られたのは、1970年代半ば以降、内陸中西部に広がる広大な熱帯サバンナ地帯(セラード)の開発が進み、農地として利用できる地域が拡大したためといわれています。
 今回は、世界最大の輸出国となった鶏肉事情について、ご紹介します。

鶏肉産業の概要

 ブラジルの鶏肉産業は、トウモロコシや大豆かすといった豊富な飼料穀物を背景として、生産から加工、流通に至るまで垂直統合された生産体系を中心に成長してきました。2019年の鶏飼養羽数は14億7000万羽、鶏肉年間処理羽数は58億500万羽、生産量は1351万7千トンと世界有数の規模を有しています。主要な生産地は伝統的に穀物生産が盛んな南部地域の3州でブラジル全体の6割近くの生産量を占めます(図)。
 ブラジルには2億人を超える大きな国内市場があり、生産された鶏肉の7割程度は国内消費され、残りの3割程度が輸出に仕向けられます。2019年の鶏肉輸出量は417万5千トン(製品重量ベース)と世界第1位で、主な輸出先は、近年増加している中国のほかサウジアラビア、日本、アラブ首長国連邦などであり、約140カ国に及ぶ広範な地域に輸出されています。
 日本向けは全体の10%程度を占め、同国にとって安定的な主要輸出先と位置付けられています。一方、日本にとってブラジル産は、鶏肉輸入量(調製品を含まない)の7割強と圧倒的なシェアを占め、馴染みの深い輸入食品の一つとして、外食などの業務用や小売店での販売を通して日本の食卓に普及しています。
図

COVID-19の鶏肉生産・消費への影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ブラジルの鶏肉産業にも大きな影響を及ぼしています。ブラジルでは、2020年2月に初めて感染が確認され、4月以降急速に感染が拡大しました。これまで何度かの波を繰り返し、約1800万人の感染者が確認されていますが、収束の兆しは見えていません(2021年6月末現在)。
 ブラジル農牧食糧供給省、経済省ならびに保健省は2020年6月19日、共同で食鳥処理場に対しCOVID-19の防止・管理・抑制対策のガイドラインを定めた省令を発令しました。このガイドラインでは、作業者間の距離の確保(1メートル以上)などの70項目が定められています(写真1)。
 食鳥処理場にとってCOVID-19対策は施設整備などのコスト増を伴うものですが、感染が拡大する中、生活に必須な業務としてガイドラインに即した操業が継続されており、これまで大規模な操業停止による生産減といった事態には至っていません。
 また、国内の消費動向をみると、都市封鎖の影響により大都市を中心に外食需要が落ち込む一方、家庭での消費が増加する傾向が見られます。さらに経済状況の悪化により安価なタンパク質として鶏肉や鶏卵などが選ばれており、これらの消費量が増加しています。
写真1 食鳥処理場でのCOVID-19対策(ブラジル動物性タンパク質協会提供)
写真1 食鳥処理場でのCOVID-19対策(ブラジル動物性タンパク質協会提供)

近年の鶏肉消費スタイル

鶏肉
 ブラジルでは、かつてテーブルミートとして丸鶏グリラー(鶏の丸焼き)を買って一家で食べるという習慣がありました。しかし、都市部を中心に核家族化が進み、丸鶏グリラーは家族全員が集う時のご馳走として食べられる程度となり、最近ではスーパーマーケットなどの食肉売り場でも、ほとんどがパーツ販売となっており、バックヤードで丸鶏をカットし、トレイパックをする店舗が多くなっています(写真2)。
 ブラジルには鶏肉料理がたくさんあります。サンパウロ州の北部にある内陸のミナスジェライス州では、オクラとともにトマトの味付けで煮込む料理や、鶏の血を混ぜて煮込む料理があります。リオデジャネイロでは、小ぶりの丸鶏を炭火で焼くガレット(Galeto)が有名で、塩だけの味付けのあっさりした料理です。(写真3)。また、全国のバール(居酒屋)では、唐揚げ(Frango Passarinho)がおつまみとして定着しています。どの肉片にも必ず骨が残るようにカットされ、ニンニクを利かせて揚げたもので、日本の唐揚げのように衣は厚くありません(写真4)。
 心臓(ハツ)は、シュラスコを食べるときの前菜として人気があり、串に刺して味付けは塩だけで、炭火焼きで提供されます。パダリア(パン屋)の多くは週末、店頭に大型グリルを出して、鶏の丸焼き(Frango Assado)を提供しています。さらに牛肉の代わりに鶏ムネ肉を使ったチキンストロガノフ(Strogonoff de frango)があり、子どもや女性に人気があります。
 また、加工品としては、安価なチキンソーセージ(写真5)がホットドッグや手ごろな家庭料理の食材として広く普及しており、薄切りにしてトマトソースで煮込んだものは、ホテルの朝食の定番メニューとなっています。このほか最近では、ナゲットや鶏肉ハンバーグ(写真6)、味付け加工品などが増えてきています。
料理
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