【alicセミナー】中国の飼料をめぐる情勢
最終更新日:2021年8月4日
alicでは、業務を通じて得られた情報や、これらに関連する様々な情報を広く国民の方々に知っていただけるよう社会的発信の充実に取り組んでおり、その一環として「alicセミナー」を開催しています。
令和3年6月10日(木)に「中国の飼料をめぐる情勢」を調査情報部の寺西梨衣(当時)から報告しましたので、その概要を紹介します(オンライン開催)。
経済発展に伴う畜産物需要増で飼料生産も増加
中国の畜産物や水産物の生産量は、経済発展に伴う需要の増加により、2000年から20年間で2倍弱に増えています(図1)。
これに伴い、家畜の飼養頭羽数が増加したこと、また、効率よく増産するために栄養価が高い飼料が求められたことから、飼料の需要も増加しています。2020年の飼料生産量は、5か年計画(“十三五”発展計画)で定められた2020年目標値の2億2000万トンを超え、2億5276万トンとなりました(図2)。
飼料の流通事情
中国の主な飼料原料は、エネルギー源としてはトウモロコシ、タンパク源としては大豆かすです。また、ビタミンやミネラルなどを補充するため、ふすま、トウモロコシの蒸留かすであるDDGS、魚粉などが使われています。
中国で流通している飼料は、日本と同様にそのまま給与できる「配合飼料」のほか、中国で多い豚とトウモロコシなどの複合農家は「濃縮飼料」を購入します(図3)。
飼料原料の輸送ルートを見てみると、トウモロコシは、黒竜江省や吉林省から遼寧省の大連まで鉄道で運搬し、そこから船で南東部の各飼料工場へ輸送されます(図4)。中国は古来より水運が発達しているので、長江や珠江流域の内陸の都市まで船でトウモロコシを運ぶことが可能です。また、南東部には大豆油工場も多く、大豆かすを容易に入手できます。原料調達が容易で消費地にも近い南東部は、飼料工場の立地に適しています。
直近の飼料需給動向
飼料の主原料であるトウモロコシの国内価格を見ると、2019年上半期は、アフリカ豚熱発生の影響で豚の頭数が減少したものの、家きん肉や牛肉の生産が増産基調で推移し飼料需要が高かったことから、価格は下降しませんでした(図5)。2020年は、中国政府が備蓄トウモロコシを競売にかけ、10〜11月に新しく収穫されたトウモロコシが流通しましたが、豚の生産が急速に回復したため飼料需要が急増し、トウモロコシ価格は上昇しました。これは、生産者や備蓄企業がさらに価格が上昇するまで売り控えたことに加え、加工企業が価格上昇前に購入を急いだこと、先物市場で投機マネーが投入されたことなどから、実際の需給ギャップ以上に価格が高騰したと考えられています。トウモロコシの国内価格と輸入価格の差は拡大しており、飼料生産企業は品質が良い輸入品の方を求めていることから、輸入量が増加しています。
こうした状況を受け、中国政府は、(1)飼料原料をトウモロコシや大豆かすから米や小麦などに代替、(2)トウモロコシの作付拡大といった穀物政策の方針を打ち出しています。
中国の畜産物需要は、今後も増加傾向で推移すると考えられています。総じて、2021年のトウモロコシと大豆の輸入量は増加し、国際価格も高値で推移すると予測されていますが、中国の飼料需給については、政府や企業による原料の備蓄状況、生産国の天候、輸送コスト、さらには投機マネーなど様々な要因が絡んでくることから、今後も多方面の情報を収集し、判断することが肝要と考えられます。
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