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【第一線から】さとうきび作業受託の若き担い手「農業生産法人有限会社大農ファーム」の取り組み

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最終更新日:2021年10月6日

図1 南城市の位置
図1 南城市の位置
 近年、生産者の高齢化や労働者不足により、さとうきびの植え付けや収穫作業などを請け負う作業受託組織の役割が年々重要性を増しています。一方で、受託作業は収穫時期に集中するため、年間を通じた従業員の雇用先確保や経営の安定化が課題となっています。
 今回は、農業生産法人の経営安定化に成功するだけでなく従業員の雇用環境を整え、技術力の高い従業員を確保することで、地域の信頼を獲得し、地域における作業受託の中核的な担い手となっている、沖縄県南城市(図1)の農業生産法人有限会社大農(だいのう)ファーム(以下「大農ファーム」という)を紹介します。

 本記事は、「砂糖類・でん粉情報」(2020年2月号)で報告のレポートを元に再編集しました
大農ファーム代表取締役の新垣智也氏
大農ファーム代表取締役の新垣智也氏

ゼロからのスタート

GAP
 大農ファームは、現在の代表取締役である新垣智也(あらかきともや)さんの父親が平成13年に設立した農業生産法人です。新垣さんは、平成23年の父親の急逝を機に後を継ぎましたが、それまでは農業に従事していませんでした。
 父親が健在の時、「会社を手伝いたい」と言ったこともありましたが、「もうからない農業を若者がやるべきではない」と断られたといいます。しかし、父親の急逝をきっかけに「自分が継ぐしかない」との思いから、同ファームの代表取締役に就任しました。継承した当時は、常勤の事務員が1人、非常勤のアルバイトが3人で、農業に詳しい人が1人もいなかったため、完全にゼロからのスタートとなりました。
 新垣さんは、とにかく勉強するしかないと関係機関などに足しげく通い、セミナーなどにも積極的に参加しました。近隣の生産者に、分からないことは恥ずかしがらず、教えてもらうつもりで積極的に訪問しているうちに、徐々に信頼関係を築くことができ、作業を教わるだけでなく、委託されるようになりました。
 さらに、受託できる作業を増やすため、補助事業などを活用して新しい機械の導入を徐々に進めていきました。それに伴い作業受託量も増加し、常勤の従業員5人体制で運営しています。

全員がオペレーター

ハーベスタ
 大農ファームが受託する作業は、さとうきびの収穫、植え付け、株出し管理(注1)、施肥(せひ)(注2)、砕土(さいど)・畝立(うねた)て(注3)などです。
 従業員全員がオペレーター(注4)として受託作業を行い、全ての仕事をこなします。作業の申し込みは生産者から直接連絡が来るようになっており、従業員を指名することもできます。従業員がそれぞれ顧客を持てるようにしており、顧客満足度の向上につながるような作業を行うよう顧客の人数に応じてボーナスを支払うなどのインセンティブを与えています。

従業員の確保と技術力向上

 一般的に作業受託組織では、年間を通じていつでも安定した作業量があるわけではないため、通年雇用が課題となっていますが、大農ファームではさとうきびの収穫だけでなく、植え付け、施肥、株出し管理などを増やすことで作業量を安定させています(図2)。さとうきびの作業が少ない時期には野菜生産者からの受託のほか、自社でさとうきびやかんしょの生産を行うことで通年雇用を実現しています。
 また、同ファームでは繁忙期を除く土・日・祝日休みを採用し、休みのイメージがない農業において、しっかりと休日を確保することで労働環境の改善につながり、従業員を採用する際も有利に働いています。
 従業員は、いずれも前職はさまざまで、さとうきびの生産に従事した者はひとりもいません。そのため、自社の圃場(ほじょう)での研修や関係機関の開催する研修会に参加させるなど技術力向上も図っています。
ハーベスタ

農家による、農家のための人材派遣

 新垣さんは、今後の目標として収入源を増やすため、自社圃場でさとうきび以外の生産も拡大することで経営の安定化を図っていきたいと話します。また、さとうきびの単収を上げるためにどのような圃場管理を行ったらいいかを生産者にアドバイスし、これまでの経験から機械収穫に適した栽培管理方法に変えていくことで、地域全体の単収(注5)の向上を図っていきたいと考えています。
 そして、まだ構想段階ではあるもののさらに従業員を増やし、いずれは「農家による、農家のための人材派遣」を理念に、技術力の高い従業員を農家に派遣する事業を新たに行っていきたいと意気込んでいます。

(注1)さとうきびの収穫後に、収穫後の株から新芽が伸びて枝分かれした株の株揃え、施肥、除草剤散布などの栽培管理を行うこと。
(注2)農作物に肥料を与えること。
(注3)砕土:畑を耕した後、土のかたまりを細かく砕くこと。畝立て:畑の土を細長く盛り上げた栽培床を作ること。
(注4)トラクター、さとうきび収穫用機械(ハーベスタ)などを操作する人。
(注5)一定面積当たりの、収穫量のこと。

(特産業務部・那覇事務所)
 
詳しくはこちらをご覧ください。
沖縄本島南部における作業受託の若き担い手「農業生産法人有限会社大農ファーム」の取り組み(砂糖類・でん粉情報2020年2月号)
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196