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【alicセミナー】「国際果実野菜年2021」 〜新型コロナ禍の野菜消費と健康〜

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最終更新日:2021年11月4日

国際果実野菜年2021
 令和3年8月31日(やさいの日)に「国際果実野菜年2021」のオフィシャルサポーター事業の一環として、女子栄養大学 教授 上西 一弘 氏および武庫川女子大学 教授 松井 徳光 氏にオンラインセミナーにてご講演いただきましたので、その概要を紹介します。

「野菜が持つ栄養素と健康について」 女子栄養大学 教授 上西 一弘 氏

 最新の「日本食品標準成分表2020年版」には、178種類の野菜や野菜ジュースに含まれる栄養成分含有量が掲載されています。特に注目したいのは、調理方法や季節による野菜に含まれる栄養価の変化です。
 例えば、ほうれん草は、茹(ゆ)でることによって、葉酸やビタミンCのような水溶性のビタミンやカリウム、マグネシウムについては損失が大きい一方、カルシウムについては損失が少ないことが分かります(表1)。また、ビタミンCについては、旬に当たる冬採りが通年平均よりも多くなっています。
 ビタミンやミネラルの供給源として、野菜は健康増進に欠かせません(表2)。また、野菜の魅力は栄養成分だけでなく、カロテノイドなどに代表される色や香り成分が豊富なことです。これら非栄養性物質は、ファイトケミカルと呼ばれ、体の調子を整える働きが認められています。
 しかし、日本人の1日当たりの野菜摂取量は、平均値280・5gとこの10年間でほぼ変わっておらず、年齢階級別に見ると、特に若年層の野菜摂取量が少ない傾向にあります(図1)。健康づくりの指標である「健康日本21」では、野菜を350g摂取することが推奨されており、全ての年代で野菜摂取量を100g増やすことが求められています。
表1「ほうれん草」の主な栄養素量
表2ビタミン・ミネラルなどを多く含む野菜
図1野菜の摂取状況

「野菜摂取量の改善が日本人の健康長寿を実現する!」  武庫川女子大学 教授 松井 徳光 氏

 現在、日本は長寿国として知られていますが、縄文時代から現代までの日本人の食事内容と平均身長および寿命との関連性をみてみると、特に動物性タンパク質が不足していた江戸時代は、身長も低く、寿命が短い傾向がみられます。現在は野菜や穀類だけでなく肉や魚など、多くの種類の食物を摂取し様々な栄養素を吸収することが可能になったことから、しっかりした体格と知力、気力を伴った健康長寿につながっているのではないかと推測されます。
 健康な体とは消化系、分泌系、免疫系、神経系、循環系がすべて正常に作動し維持している状態のことです。そのような体を作るために、糖質、タンパク質、脂質(三大栄養素)にビタミン、ミネラルを加えた五大栄養素だけでなく、食物繊維や機能性成分も過不足なく摂取することが重要です。
 老化も二つに分けられます。誰もが避けられないのが白髪やシミ、老眼などの生理的老化ですが、高血圧や認知症といった病的老化は抗酸化作用のある食品の摂取で予防でき、抗酸化作用が期待できる食品として多くの野菜が挙げられます(表3)。
 野菜の食べ方でおすすめしたいのが漬物、なかでもぬか漬けとキムチです。野菜に豊富なビタミンは加熱に弱いものが多くありますが、ぬか漬けは熱を加えず微生物の発酵によって多種多様なビタミンが蓄積されています。キムチは、野菜に含まれる食物繊維が生きた乳酸菌の増殖を促進させ、整腸作用や便秘予防、大腸がん予防が期待できます。免疫力を高め、感染症を予防するためにも良い腸内細菌のバランスを保ちたいものです。
表3抗酸化作用が期待できる成分と食品
 野菜不足が続くと、(1)腸内環境が悪化する、(2)肌が荒れやすくなる、(3)疲れやすくなる、(4)免疫力が低下する、(5)生活習慣病になる、といった健康面での悪影響があります(図2)。日本は世界一の長寿国となっていますが、現在の日本人は野菜不足で、特に若年層の摂取量が少ないことから、今後の短寿命化が危惧されます。
 野菜を摂取すれば、多くの栄養素や機能性成分を吸収でき、健康的な体が維持され、疾病を予防できるなど多くのメリットがあります(図3)。健康長寿を実現させるために、もっと野菜を食べましょう。
図2野菜不足による影響
14図3野菜を多く食べるメリット
 松井教授は、野菜情報「国際果実野菜年2021特集コーナー〜四季の野菜と健康〜」 にて連載されています。

 業務を通じて得られた情報や、これらに関連する様々な情報を広く国民の方々に知っていただけるよう社会的発信の充実に取り組んでおり、その一環として「alicセミナー」を開催しています。
 講演資料は、こちらからご覧ください。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196