【寄稿】海外農業研修で学ぶ世界の農業
最終更新日:2022年12月5日
公益社団法人国際農業者交流協会
はじめに
公益社団法人国際農業者交流協会は、農業の発展、開発途上国農業の開発および農業者レベルの国際交流の促進、さらには世界の調和ある繁栄と平和に寄与することを目的に、就農を志望する若者を海外派遣し国際感覚を養い育てるとともに、開発途上国から農業研修生を受け入れて中核農業者を養成することなどに努めています。今回は、本会の活動のうち、農業研修生海外派遣事業(海外農業研修)についてご紹介します。
“農業留学”しよう
一般に留学と聞くと大学や研究機関で学ぶことをイメージすると思いますが、本研修では外国の農場で実践的に学びます。
農業は体を動かしたり道具や機械を使ったりして習得する、いわゆる手仕事・技術職に近い性質があることから、理論や概念を理解するだけで上達するものではありません。海外農業研修は、グローバル化する農業界に関わる若者の成長のため、実務研修に重きを置いた人材育成事業であることを強調したいと思います。
海外農業研修は1952年にスタートし、今年で70周年を迎えました。これまでに1万5千人以上の研修生を送り出してきましたが、ここ2年間は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により大きな影響を受けました。渡航を目前に入国制限があって渡航日を変えざるを得ない、翌年へ延期せざるを得ないなど、研修生にとっては試練でした。2022年度は、順次渡航できるようになり全員が各国各地においてそれぞれの研修を行っています。
どんなプログラムなのか
現在実施中のプログラムは、アメリカ、オーストラリア、デンマーク、ドイツ、スイス、オランダなどの農家に1年〜1年半滞在するもので、おおむね20〜30歳の農業を目指す方々を対象に選考が行われます。
研修生は、専攻業種に合った農場で実習します。対象品目は、野菜、果樹(リンゴやナシなど)、酪農、肉牛、養豚、養鶏、造園、切花、鉢物がありますが、国によっては、マンゴーやコーヒーといった特徴的な品目について学ぶこともできます。
募集人数が最も多いアメリカコースでは、6月下旬に渡米後、大学での座学と農場実習を組み合わせた「サンドイッチ教育」を実施し、世界最大の農業大国で多角的に学ぶ機会が用意されています。
いま、農業留学のチャンス!
研修参加費用はおよそ130万〜170万円程度ですが、2021年と2022年は国の助成金が設けられたため、かなりリーズナブルに参加できるようになりました。
たとえば、農林水産省の農業教育高度化事業では、海外農業研修参加費用の半額、最大60万円が助成されます(各都道府県の窓口にて将来農業に従事すると宣言して申請)。単純計算で、研修費が130万円であれば70万円で参加できることになります。さらに、本会独自の無利子の貸付制度により50万円を借りれば、当初の自己資金20万円で参加できることになります。現地農場実習中は実習手当が出ることから、しっかりマネジメントすることで、現地研修費に充てられます。以上のことから、外国で農業を学ぶことが日本の農業にとって大変重要な意義があるとして国も応援してくれていることがしっかり見て取れるかと思います。ぜひこの機会を生かして、夢を叶えていただきたいです。
変化し続ける農業の輪郭
農業は時代と共に変化してきました。大規模・機械化が進み、IoT技術の導入も進みました。一方で、有機農業やアニマルウェルフェア(家畜の快適性に配慮した飼養管理)など、自然環境保全や生き物の権利保護なども念頭にした経営が求められつつあります。地球温暖化対策や温室効果ガスの削減など農業に課せられる義務も無視するわけにはいきません。
このような時代には、農業の多面性を理解し、変化し続ける農業の輪郭をなぞりビジネスにつなげる力が必要です。海外農業研修生たちは、外国の環境の異なる現場で右往左往しながらも、着実にその力を身に付けていきます。研修修了生は、就農はもちろん、農業関連企業や教育機関などで活躍しています。
本会は、70年に及ぶ長い歴史の中で培われた確かな経験と、世界中に広がるネットワークを駆使して、参加者一人一人と向き合いながら、海外農業研修で視野を広げる就農志望者を応援していきます。
海外農業研修について、詳しくは
こちら
【お問い合わせ先】(公社)国際農業者交流協会 03-5703-0252
公益社団法人国際農業者交流協会 概要
1952年に設立した社団法人国際農友会と1966年に発足した社団法人農業研修生派米協会が、農業研修生海外派遣事業などの充実強化を図るため解散統合して、1988年3月30日に設立(主務官庁:内閣府)。
主な事業は、(1)農業研修生海外派遣事業、(2)アジア農業青年人材育成事業、(3)欧州農業研修生受入事業、(4)海外農村開発支援事業、(5)国際化対応営農研究事業など。 |
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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