JETROブリュッセル事務所の平石康久氏によるセミナーをalicチャンネル(YouTube)にて配信しました(配信期間:2022年11月24日(木)〜12月23日(金))。
ドイツは、国土面積が日本と同規模ながら、その半分以上が農用地として利用されているため、環境に及ぼす影響の一因として農業が注目されています。
同国の農業産出額のうち約半分を畜産が占め、そのうち4割以上が酪農です。EUの生乳生産量の2割を占めるEU最大の酪農国で、生産者戸数や生乳生産量は日本の4倍以上です。
EUは、グリーンディール戦略(注)で、持続可能性に関する目標を掲げ、農地に占める有機農業の割合を2030年までに20%に拡大するとしていますが、ドイツはこれを30%とさらに高い目標を掲げています。
同国最大の乳業メーカーであり酪農協でもあるDMK社は、持続可能性を不可欠な戦略要素とみなし、飼養環境の改善、適切な給餌、家畜の健康や環境・気候保護などに役立つ取り組みを行う契約生産者に対して生乳の買取価格を上乗せする「ミルクマスタープログラム」を実施しており、契約生産者の約9割が同プログラムに参加しています。
注:資源の消費を抑えつつ経済成長を実現し、2050年までの温室効果ガスの実質排出ゼロ(気候中立)とすることを目指す戦略。
DMKの「ミルクマスタープログラム」に参加する
契約生産者のフリーストール・搾乳ロボット牛舎
グリーンディール戦略の目標を達成するとコスト増から生乳生産量が10%程度減少するという欧州委員会の研究機関の見通しもある上、ウクライナ情勢に伴う物価の上昇が生産コストを押し上げる要因となっています。EUでは持続可能性の向上が推進されていますが、その取り組みにかかるコストの負担について、今後焦点になるものと思われます。
視聴者からは、「普段なかなか得ることの出来ない情報を学ぶ機会として、今後の業務に役に立つと思った」「酪農部門の課題などを認識し、日本においても意識しておかないといけないと感じた」といった感想が寄せられました。
alicでは皆様のご意見を踏まえ、今後も情報提供に取り組んでまいります。
講演資料は、
こちらからご覧ください。
参考
畜産の情報 2022年9月号「酪農大国ドイツにおける持続可能性への取り組み」