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〜海藻を利用した飼料添加物の給餌〜

【REPORT】オーストラリアの温室効果ガス削減に向けた取り組み
〜海藻を利用した飼料添加物の給餌〜

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最終更新日:2023年6月5日

広報誌「alic」2023年6月号

海藻の一種であるアスパラゴプシス (フューチャーフィード社のHPより)
海藻の一種であるアスパラゴプシス
(フューチャーフィード社のHPより)

 近年は世界中で異常気象が多発し、農畜産物の生産にもさまざまな影響が生じる中で、気候変動に対する国際的な関心が高まっています。2015年に採択されたパリ協定(注1)では、気候変動の一因とされる温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けて、すべての国に一定の削減目標が課せられました。これにより、現在、世界各地で地球温暖化防止に向けた取り組みが行われています。
 農業大国であるオーストラリアでは、国内のGHG排出量の10%が牛などの反すう動物に由来するとされ、畜産業界でもGHG排出削減に向けたさまざまな取り組みが行われています。今回は、同国で有望視されている海藻の一種、アスパラゴプシス(日本では通称「カギケノリ」)を利用した飼料添加物(注2)について紹介します。

(注1)2020年以降のGHG排出削減などのための新たな国際的な枠組み。オーストラリアでは、2030年までにGHG排出量を2005年比で43%削減、2050年にはネットゼロ(カーボンニュートラル)を目指す目標が掲げられました。
(注2)にんにく、サトウキビのエキスや抽出液などもGHG排出削減効果が期待される飼料添加物として報告されています。

1.アスパラゴプシスによる大幅なメタン抑制効果を発見

 同国の畜産関係組織である豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)、政府機関である豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)およびジェームズクック大学は、共同研究により改良したアスパラゴプシスを飼料に0.5%混ぜて牛や羊に給餌することで、これら家畜の消化器官に存在するメタン生成細菌の働きを抑制し、主にげっぷにより排出されるメタンを8割以上抑制する効果があることを発見しました。この成果を管理するため、官民共同でフューチャーフィード社を設立し、国内外に向けて商業化のためのライセンスを発給しています。

改良されたアスパラゴプシス(左)と給餌試験中の牛(右)(フューチャーフィード社提供)
改良されたアスパラゴプシス(左)と給餌試験中の牛(右)(フューチャーフィード社提供)

2.普及に向けた研究

 こうした中、オーストラリアでは、アスパラゴプシスの飼料添加の普及に向けて動き出しています。世界で初めて商業規模でのアスパラゴプシスの栽培に成功した同国のシーフォレスト社は、アスパラゴプシスをオーストラリア産のカノーラオイルと混合することで、オイル中に抽出される活性化化合物の安定化や苦味成分の除去を実現しました。現在、このオイルを牛1頭当たり1日40ml程度飼料に混ぜて給餌した場合、平均で7割程度のメタンの発生を抑制できることが確認されています。

同社ではさまざまなアスパラゴプシスの育成環境を設定し、研究を進めています。(タスマニア州)
同社ではさまざまなアスパラゴプシスの育成環境を設定し、研究を進めています。(タスマニア州)

3.「持続可能なハンバーガー」を販売

 このように、アスパラゴプシスの飼料添加物としての活用が進む中で、これを給餌した牛の肉は環境に配慮しているなどのPRも行われています。
 同国のハンバーガーチェーンでは、「1つのバーガーで世界を変えていく」をスローガンに、2023年1月からアスパラゴプシス抽出物を給餌した牛の肉をパテに使用した「ゲームチェンジャーバーガー」を販売しています。価格は通常のハンバーガーよりも1豪ドル高い13豪ドル(1183円:1豪ドル=90.98円(注3))で設定されていますが、当初予定していた販売目標を大きく上回るなど、同国の持続可能な食肉消費に対する関心の高まりを垣間見ることができます。

(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末TTS相場。

ゲームチェンジャーバーガー(左)と店頭に設置されたアスパラゴプシスを模したアーチ(右)(キャンベラ市内)
ゲームチェンジャーバーガー(左)と店頭に設置されたアスパラゴプシスを模したアーチ(右)(キャンベラ市内)

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