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【業務関連情報】高齢化が進む種子島のさとうきび生産を支える生産法人「株式会社銭亀(ぜにがめ)」の取り組み

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最終更新日:2023年10月5日

広報誌「alic」2023年10月号

はじめに

種子島の位置

 砂糖は、国民の摂取カロリー全体の約8%を占めています。その原料の一つであるさとうきびは、台風の常襲地帯である沖縄県や鹿児島県南西諸島において基幹的な作物です。この作物の安定生産とそれぞれの地域に立地する国内産糖製造事業者、運送業者などの関連産業は、地域の経済・雇用にとって、なくてはならない重要な役割を果たしています。
 種子島のさとうきび生産現場は、他産地と同様に高齢化が進んでいます。今回は、耕作放棄地の借り受け、作業受託および高齢者雇用を積極的に実施し、地域のさとうきび生産を支える株式会社銭亀(以下「銭亀」という)の取り組みを紹介します。

資料:独立行政法人農畜産業振興機構「甘味資源作物交付金」  注:甘味資源作物交付金の交付実績がある者(法人を除く)を集計したもの。    令和4年産は要件審査(令和5年2月10 日現在)のデータを基に集計。

銭亀の取り組み

 銭亀は、南種子町の島間田尾地区を中心にさとうきびの栽培を行う法人です。代表取締役社長の池亀昭次氏は就職を機に上京しましたが、30歳手前頃母が他界したことにより、父を支えるため島に戻ることを決意しました。それ以降、長年農業を営んできた池亀氏でしたが、農家の高齢化やそれに伴う耕作放棄地の増加に対して、常々問題意識を持っていました。そこで、池亀氏は同世代の仲間2人に声をかけ銭亀を設立しました。構成員は現在4人で、作業の繁忙期となる2〜4月は、集落内の高齢者を雇用しています。

銭亀の生産量および収穫面積の推移

 銭亀の収穫面積は、耕作放棄地の圃場(ほじょう)を借り受けることにより、法人設立当初の9.68ha(平成30年)から、15.40ha(令和3年)にまで拡大しています。
 また、さとうきびの発芽率向上を目的に、新しく植え付ける前の天地返し(土壌改良)、土を株元に寄せる培土、刈り取り後の速やかな株揃えなど、丁寧な作業を心がけています。さらに、町の指針に関する情報収集を積極的に行うとともに、近隣農家からの知恵も借りて、収量向上に取り組んだ結果、生産量や単収(一定面積当たりの収穫量)も増加させてきました。

現状と課題

 耕作放棄地によっては、借り受けを円滑に行えないことがあります。例えば、(1)名義人と納税者が異なっている(2)名義人が遠方にいる(3)名義人が分からないといった利権関係の問題で事務手続きが行えない場合です。作業を効率的に行うため、圃場同士を交換して集約できれば理想的ですが、圃場交換に消極的な農家が多く、うまく進まないといった課題もあります。
 また、作業受託では、希望が集中する収穫時期のスケジュール調整に苦労しています。また、作業用の各種機械のメンテナンスも負担となっています。農地を使ってほしい、作業を請け負ってほしいという相談は多く、また困っている高齢農家を助けていきたいという思いもあるので、マンパワーなど制約はあるが、依頼はもっと受けていきたいと池亀氏は話しています。

今後の展望

さとうきびと池亀氏
さとうきびと池亀氏

 今後の展望として、池亀氏は、高齢者の雇用を通して、農業と福祉の連携を考えています。例えば、一人暮らしの高齢者が自宅の外に出て、他者とコミュニケーションをとる機会を作ることで、高齢者の孤立を防ぐことができます。また、異なる年齢層の交流が生まれることで、人材育成の基盤となり、若い世代の農業参入のきっかけとなることで、地域の活性化につながると信じています。



詳しくはこちらをご覧ください。
高齢化が進む種子島のさとうきび生産を支える生産法人〜株式会社銭亀の取り組み(砂糖類・でん粉情報2023年3月号)

(特産業務部・鹿児島事務所)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196