【REPORT】メキシコの伝統的な砂糖「ピロンシージョ」
最終更新日:2023年12月5日
1.世界トップクラスの砂糖生産・消費国
メキシコは年間約600万トンの砂糖を生産し、約500万トンを消費する、世界でもトップクラスの砂糖生産・消費国です(2021/22年度(2021年10月〜翌9月))。同国の人口は日本とほぼ同じで1億3000万人、国土の面積は日本の約5倍の広さがあります。日本では、国内の原料(さとうきびやてん菜)から生産される砂糖は年間約80万トン、消費される砂糖は約180万トンであることから、メキシコの砂糖産業の規模の大きさがよく分かります。
砂糖の原料であるさとうきびは、同国で重要な農作物の一つで、収穫面積は約80万ヘクタール(日本の約34倍)、収穫量は約5300万トン(日本の約42倍)です。同国の32州のうち15州で生産されており、その生産地域は沿岸部から、内陸部の標高1300メートル付近の高地にまで、さまざまな地域に及びます。生産量を州別に見ると、メキシコ湾沿いのベラクルス州がもっとも多く、全体の約5割を占める一大産地です。また、テキーラで有名な太平洋沿いのハリスコ州や、後述する「ピロンシージョ」の約6割を生産するサン・ルイス・ポトシ州でも多く生産されます。製糖工場は、さとうきび生産地に分布しています。
(地図)さとうきびの生産州と製糖工場の分布、(写真)さとうきびほ場と運搬トラック
2.伝統的な砂糖「ピロンシージョ」
皆さまは、「ピロンシージョ(piloncillo)」という砂糖をご存じでしょうか。
ピロンシージョは、さとうきびの搾り汁を煮詰め、円錐台形の木型に流し固めてブロック状にした含みつ糖で、同国では500年以上の歴史があります。
味わいは日本の黒糖に近く、写真のように褐色を帯びています。中南米をはじめ、世界には「チャンカカ」「ラパドゥーラ」「パネラ」など、地域によって名前の異なる同様の含みつ糖があると言われています。
ピロンシージョは非常に硬く、調理の際にはおろし金ですり下ろしたり、ナイフで削ったりします。ピロンシージョは同国の食生活に深く浸透し、伝統料理であるオアハカ料理などに広く利用されてきました。
また、未精製であるため、ミネラルやビタミンを多く含み、伝統的な料理に素朴な風味をもたらすユニークで複雑な甘みのある甘味料であると言われています。さらに、無添加であることから、近年の健康意識の高まりを受けて注目を集めています。
3.ピロンシージョを味わう「チャンプラード」
今回は、ピロンシージョとチョコレートタブレットを使った「チャンプラード(Champurrado)」と呼ばれるチョコレート飲料を紹介します。
同国には「アトーレ」と呼ばれるマサ粉(アルカリ処理したトウモロコシの粉でトルティーヤの原料)に砂糖やピロンシージョを加えて煮詰めた伝統的な穀物飲料がありますが、このアトーレをチョコレートベースにしたものがチャンプラードです。マサ粉の濃厚な味わいにチョコレートの甘みが際立つやさしい風味のチャンプラードは、栄養価も高く、冬にぴったりなとてもおいしい飲み物です。もし機会がございましたら、ぜひお試しください。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196