【業務関連情報】本当においしい乳製品は牛の健康づくりから
〜(有)ダイワファームのチーズ工房を訪ねて〜
最終更新日:2024年3月5日
南西部には霧島連山、北部には九州山地を望み、豊かな森林が育む清流が流れる宮崎県小林市。ここで酪農経営を営む有限会社ダイワファームのチーズ工房を訪ね、その取り組みを伺いました。
チーズ作りへのチャレンジ
有限会社ダイワファーム
代表取締役 大窪氏
ダイワファームでは現在、30頭余りの牛のしぼりたての生乳から、隣接した工房でチーズなどの乳製品を製造しています。昭和50年頃に経営を引き継いだ大窪さんは当初、経営規模の拡大を目指します。ところが、現在の倍となる60頭前後まで増頭を進めた平成5年、厳しい生乳の生産調整が行われます。これをきっかけに、生乳出荷に頼る経営から自ら加工して販売する方針を模索し始めました。
生産調整から3年の準備期間を経てアイスクリーム製造を開始、さらに10年程を経てチーズ製造を開始します。チーズ作りに興味を持ったのは、雑誌の「家庭でできるチーズ」という特集がきっかけでした。器具や材料の入手先も分からなかったものの、大変そうというよりも興味の方が強かったという大窪さん。インターネットも普及していない頃で、レンネットと呼ばれる牛の消化酵素などを原料としたチーズを固まらせる材料がどうしても見つからなかったと言います。
そんな中、偶然農業高校の先生と知り合いになり、高校生に交じってチーズ製造の実習に参加したところ、レンネットの入手先も教えてもらうことができました。「家の鍋で初めて作ったのは熟成チーズで、器具も無いからペットボトルに穴開けたものに入れて熟成させたりして試行錯誤して、とにかく、2か月ぐらい経って食べてみようと。そしたらまさにチーズができたんですよ!フライパンで加熱したらとろけて。感動でした。」
本格的なチーズ生産をスタート
その後、県外のチーズ工房などでの修行を経て、平成17年頃にチーズ工房を構えます。当初はゴーダ系のチーズが中心でしたが、ある研修会でモッツァレラチーズを作ったときにその魅力にはまってしまったそうです。
モッツァレラチーズの本場イタリアの工房を回り、本物の味を追求しますが、「同じやり方で同じチーズは作れない。やっぱりもとになる生乳が違うから。それをどう応用するか、日本に合ったチーズ製造を考える必要がある」と、ダイワファームに合った方法を模索し、長い年月を経て納得のいく味が実現できるようになりました。現在は、イタリア系のチーズを中心に十数種類のチーズを製造しています。
生乳へのこだわり
ダイワファームでは、飼養する牛の6割ほどが、生乳がチーズ加工に適していると言われるブラウンスイス種です。さらに、牧草を中心にした飼料設計であえて乳量を抑え、チーズ作りに適した高い乳成分の生乳生産を目指しています。夏場でもいかに乳成分を下げないかに腐心しているそうです。
高品質な生乳は牛の健康から
生乳の品質を左右する牛の健康には特に気を配り、乳房炎予防のため畜舎の清掃を徹底。乳成分や体細胞数などを常時モニタリングするのはもちろんのこと、定期的な血液検査で潜在的な疾患の早期発見につなげるなど、高品質な生乳を安定的に生産するためのさまざまな取り組みを行っています。
alicでは、チーズ原料乳の高い品質を確保するための飼養管理の高度化、乳質管理に取り組む費用の一部を支援する国産チーズ生産奨励事業を行っており、ダイワファームもこの事業を活用しています。特にコロナ禍での厳しい経営環境では、取り組み継続の一助になったそうです。
消費者の皆さまへ
最後に、大窪さんに消費者の方へのメッセージをお聞きしました。
「作り方は本場のヨーロッパと同じですが、生乳の違いなどから、ヨーロッパほど強い味は出ません。でも逆に言えば、日本人好みの食べやすいチーズとなっています。ホットプレートなどでチーズを溶かして野菜などと一緒に食べるのもおすすめです。」
本場の製法で作ったチーズは、国内外のコンテストでも高い評価を得ています。冷凍技術の発達で風味を損なわず長期輸送が可能となってきたことから、今後は輸出も検討しているとのこと。ダイワファームのチーズが、小林市から世界の食卓に届く日も近いかもしれません。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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