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【第一線から】新規就農支援によるトマト産地の活性化「一般社団法人 とまと学校」 〜大分県竹田市荻町〜

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最終更新日:2015年9月2日

大分県の南西部に位置する竹田市
大分県の南西部に位置する竹田市

 西日本有数の夏秋トマトの産地である大分県竹田市では、平成 22 年に産地の維持、活性化を目指し、新規就農者の育成・確保を図る取り組みがスタートしました。設立5年を経て成果を挙げている取り組みを紹介します。

◆とまと学校設立

 同市の荻町地区は、昼夜の温度差が大きい標高約500メートルの高原地帯にあり、トマト生産に適しているため、昭和 43 年頃から生産が始まりました。昭和 53 年頃からのビニールハウスの普及に伴い作付面積が拡大し、alicが実施する指定野菜価格安定対策事業(※)にも加入して、産地の維持や生産者の経営安定に努めてきました。
 しかし、近年は、高齢化による農家戸数の減少や、作業負担の軽いピーマンへの品目転換などにより、産地の衰退が進んでいます。このため、『産地を活性化したい』という地域関係者の強い想いから「とまと学校」が設立されました。同校の施設(10連棟耐候型ハウスの養液土耕隔離床栽培、45 a)は、農業水利事業関連の研修農場(事業期間:8年)として大分県土地改良事業団体連合会が整備し、その管理運営は、大分県豊肥振興局、市役所、JAおおいた竹田事業部等の連携・支援の下で、地域の生産者らが参画した同校が行っています。

図

◆雇用型方式で研修生が安心して学べる環境を

研修生を指導する小出さん。ご自身も40年以上のキャリアをもつ生産者です。
研修生を指導する小出さん。ご自身も40年以上のキャリアをもつ生産者です。

 同校ではHPや大分県主催の新規就農セミナーを活用して、県内外から研修生を募集しています。研修生は、2年間の同農場での実践的な研修や、各種勉強会への参加により栽培技術と経営知識を習得し、卒業後はJA竹田事業部のトマト部会(部会員 82 名)に加入して就農します。
 同校の特徴の一つは、研修生に『雇用型方式』により技術を習得させる方法を取り入れていることです。同校設立以来の代表理事で指導者の小出美紀夫さんのお話では、その理由は、「雇用し、一定の給与を支給することで、生活面の不安を軽減し、研修生が安心して栽培技術の習得に集中することの出来る環境づくり」にあります。同校では、より実践的な研修を重視しており、特に研修2年目は、各人に担当ほ場を割り当て、は種から収穫まで全ての作業に責任を持って行う方式をとっています。また、卒業後の農地の確保や設備資金の調達も、地域の関係者や関係機関・団体がアドバイスやアフターケアを行う体制が整備されています。中でも、産地で指折りの高い栽培技術力をもつ小出さんは、研修中はもとより、卒業後も、自らの農業経営の傍らで精力的にアドバイスされるため、昨年度は全ての卒業生(4経営体6名)が部会トップ 10 の生産実績という快挙を成し遂げました。

◆脱サラしてトマト生産者へ

第二期生の松下さん。トマトの品種は「みそら」。ほぼ全量を農協に出荷します。
第二期生の松下さん。トマトの品種は「みそら」。ほぼ全量を農協に出荷します。

 第2期生で平成 24 年に研修生となった松下さんは、日々変化を感じながら命を育てる農業に魅了され、会社を辞めて入学されました。「従業員として雇用されることが、『とまと学校』を選んだ理由の一つ。栽培技術を習得しながら給料も支給されるのでとても助かりました。」と話されていました。現在はとまと学校の目の前に建てた 30 aのほ場で、栽培を行っています。

◆日々の仕事に信念をもって

小出さんと、現在研修中の三期生
小出さんと、現在研修中の三期生

 就農1年目は、日照不足による花落ちや追肥用機器の故障などの問題が数多く発生し、その都度、小出さんに相談しながら対策を考え、時には、深夜にヘッドライトをつけて機器の修理も行いました。
 それでも松下さんは、「畑に足跡をつけた分だけトマトも応えてくれる」という小出さんの信念を信じて取り組んだ結果、昨年は卒業生の中でトマトの単収が1 位の好成績を挙げました。「たくさんの苦労があったので、単収1位に驚きましたが、これからも毎日の作業を丁寧に着実に頑張りたいです」と抱負を語られていました。

◆とまと学校がもたらした産地の活性化

 学校設立から既に6名が卒業して就農し、さらに5名が研修に励んでいます。卒業生の中には、「夢高原とまと」という農事組合法人を立ち上げた方も現れています。
 同校の運営を協力・支援する県や市役所の担当者からは、「若くて技術力のある新規就農者が増え、産地が活性化している」という声が聞かれます。
 今後は、学校運営で培われたノウハウが活かされて、新規就農者が着実に増加し、産地が活性化していくことが期待されます。

制度

(野菜業務部)

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