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【レポート】インドネシアの牛肉需給

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最終更新日:2015年9月2日

調査情報部 中島 祥雄

 中国、インド、米国に続く世界第4位の人口を有し、現在も人口の増加が続くインドネシア。約 2億5千万人という人口はASEAN諸国の中でも最大となっています。現在、インドネシアにおける1人当たりの牛肉消費量は増加傾向にあり、今後主要な牛肉消費国になるとみられています。一方で、インドネシアは、距離が近いことなどから、豪州から牛肉のみならず生体牛も輸入しながら、国内の需給を賄っています。インドネシアの今後の動向は、同じく豪州から多くの牛肉を輸入している日本の需給にも影響がでることも推測されます。そこで、今回は、インドネシアにおける牛肉需給動向について紹介します。

都市部での伸びが著しい牛肉消費

 インドネシアの1人当たり牛肉消費量は、年間2・2キログラムと日本の4割弱に過ぎません。しかし、経済発展とともに大手ファーストフード店の出店やステーキ、焼き肉といったインドネシア料理とは異なる食べ方の普及により、その消費量は増加傾向で推移しており、2014年の消費量は2005年と比べおよそ1・7倍となっています。首都ジャカルタなどの都市部では、消費の伸びが特に著しく、ホテルやレストラン向けの輸入牛肉の高級部位などは慢性的に不足している状況です。
 牛肉消費形態として特徴的なものに、バッソと呼ばれる肉団子があり、高級デパートから、生鮮食品を扱う伝統的なウェットマーケット、屋台まで、あらゆる場所で販売されています。バッソは、牛肉のほか、牛の内臓や鶏肉も使用される同国で最もポピュラーな加工品で、内臓を含めた牛肉輸入量の過半がバッソの原料に仕向けられるとみられます。

図1 肉用牛の地域別飼養分布
図1 肉用牛の地域別飼養分布

牛肉や生体牛の輸入で国内供給を補完

 インドネシアの肉用牛生産を日本と比較すると、肉用牛農家戸数は約600万戸と日本の1 0 4倍、肉用牛の飼養頭数は約1269万頭と約6倍であり、1戸当たり平均飼養頭数は、日本の 45 頭に対し、約2頭と非常に規模が小さい状況です。また、専業の肉用牛農家は少なく、ほとんどが家族で水田・畑作農業を行っています。肉用牛の4割はジャワ島で飼養されています。しかし、島内のインフラ整備が遅れていることから、牛肉消費の約7割が集中しているとされるジャカルタ周辺では、国内主産地の牛肉よりも隣国である豪州からの牛肉や生体牛の方が手配しやすいと言われることもあります(図1)。
 需要の増加に伴い、牛肉の供給量も増加傾向で推移していますが、牛肉生産量は、繁殖性の低さなどから日本とほぼ同じ年間 50 万トンにとどまっています。国内生産量が供給量全体に占める割合は 87 %であり、そのうち2割は豪州から生体で輸入した牛に由来しています(図2)。豪州側からしても、インドネシアは生体牛の輸出において最大の顧客であり、輸出の過半がインドネシア向けとなっています。

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輸入増加で国際需給に影響を与える可能性

 インドネシア政府は、増加し続ける牛肉需要に対応するため、自給率を向上させようとしている段階であり、現時点では増産体制が十分に構築されているとはいえません。ジャカルタ周辺には、フィードロットと呼ばれる企業経営による大規模な肉用牛肥育施設も存在し、 60 ha の敷地に4万頭弱の牛を肥育し、500人を超える従業員を雇用しているケースもありますが、インドネシアが拡大する牛肉の需要に対し輸入依存度を高める方向に向かえば、国際的な牛肉需給に大きな影響を与える国になると見込まれます。

図2 牛肉の供給状況
図2 牛肉の供給状況

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