【alicセミナー】メキシコの牛肉、チリの豚肉、その生産および輸出動向
最終更新日:2015年9月2日
alic調査情報部では、最近の農畜産物の需給状況等を把握するため海外調査を実施しています。8月6日(木)に調査情報部上席調査役の横田徹(メキシコ)および米元健太(チリ)より、調査の結果報告を行いましたので、概要を紹介します。
NAFTAおよびFTAによりメキシコの牛肉輸出は拡大
メキシコの牛肉生産は、1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)締結以降、アメリカという巨大な市場を背景に拡大傾向です。その後、日本も含めた多くの国との間でFTA(自由貿易協定)を締結するなど積極的な外交政策により牛肉の輸出量は増加しています。
南部のベラクルス州やチアパス州では、放牧を中心とした小規模経営が多いものの、北・中部のハリスコ州やチワワ州などでは大規模フィードロットによる輸出に主眼をおいた穀物肥育が増えています。そのため、牛肉輸出量は増加しており、2015年は冷蔵・冷凍合わせて 16 万トンを超えると予想されています。輸出の8割を占めるアメリカ向け高価格部位の牛肉は、アメリカ産のものと比べ、と畜年齢が低いため軟らかい、赤みが多いなどの理由から高い需要があります。また、世界基準の食肉処理・加工施設を整備していること、食肉・内臓処理に対する細かなニーズに対応できることなどが、メキシコが持つ牛肉輸出の優位性となっています。一方で、国内のトウモロコシ生産は食用トウモロコシが一般的で、飼料用はわずかです。そのため、飼料用トウモロコシの安定確保が今後の課題となっています。
図1 メキシコの牛肉輸出量の推移
国際市場からも認知度の高いチリの豚肉、持続可能な生産方式が今後の課題
過去に主要な疾病が発生していない状況であるチリは、安定的な豚肉の供給元として国際市場から認知されています。豚の飼養地域は、大消費地・輸出港に近い中心部に集中しています。
チリでは、1980年代中頃以降、民間主導で養豚産業の育成がなされ、2000年代には、日本・韓国を中心に豚肉輸出を順調に拡大しました。現在も日本や韓国は安定した輸出先となっています。しかし、環境意識の高まりによる養豚場・加工場の立地問題から、最大手の大規模養豚施設が閉鎖したことにより、2012年以降豚肉生産は停滞しています。一方で、国内消費が増加していることから、輸出余力が縮小しているのが現状です。
チリの豚肉生産体系は、企業養豚が中心で、インテグレーターと呼ばれる飼料調製から生産・加工までを自社で完結する大手企業上位3社が生産の8割を占めています。この体制により、日本の4割弱という生産費やパッカーの優れた規格対応などを実現し、このことがチリ豚肉の輸出優位性となっています。しかし、環境問題に起因した生産規模拡大への制約が今後の課題として残っています。
図2 チリの豚肉生産量と養豚経営体数の推移
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