【第一線から】 「顧客の楽しみ・喜び」で「経営安定」を追求する有限会社森ファームサービスの取組み
最終更新日:2012年5月31日
(森社長夫妻(後方のお二人)とスタッフの皆さん)
にんじんのほ場
茨城県の西端に位置する古河市には、平坦な地形が広がっています。その古河市の郊外の田畑地帯で、今回ご紹介する有限会社森ファームサービス(以下「森ファーム」という。) がユニークな農業を展開しています。
ばれいしょの収穫作業
森ファームの発足は、昭和55年。社長の森雅美さんは、20歳の時に実家の兼業農業を継ぎ専業経営を目指していました。規模拡大に一定の目途がつき、生産性重視から安心・安全の追求に経営方針を切り替えようと思い立ったことを契機に、森ファームを法人組織に移行。当初、50 haだったほ場は、高齢化の進展に伴う離農等により増加する貸し出し希望のほ場の借り入れを進めた結果、現在では、100haに拡大し、水稲30ha、蕎麦100ha、小麦20ha、ばれいしょ30ha、にんじん5haの生産を行うまでになりました。
里山の森ぽっぽ
また、農業生産以外にも、精米、そば粉の製造等を行うほか、生産した農産物を原料に、どぶろく特区を活かした酒造りや手作り味噌等の加工品の製造を行い、自社の直売所である「里山の森ぽっぽ」等を通じて販売しています。ここでは、れんげ祭り、そば打ち教室、収穫祭等、毎月多彩なイベントを企画・開催しており、古河市における行楽スポットの一つとなっています。ちなみに、「里山の森ぽっぽ」を訪れるお客は年間延べ2万5千人にものぼります。毎月、米を引き取りに訪れる会員の中には神奈川県等の遠方からの方も多くみられます。森社長は、六次産業化法の施行に当たって昨年度に農林水産省で開催された「六次産業化全国推進会議」において、基調講演を行うなど、オピニオンリーダーとしても活躍しています。
自社の農産物使用のどぶろく、味噌等も販売
森ファームの取り組みのユニークな点は、米の販売にも表われています。相場の変動によって不安定となる収入を避けるため、約20年前に田園調布の住宅街で自らチラシ配布して米の直売を始めました。現在は、生産量の3分の2を「里山の森ぽっぽ」等において四千人の会員をはじめとする個人のお客に直売し、3分の1を契約取引を通じて業者に販売することにより、収入の安定化を図っています。
収入を安定化させる考えは、野菜についても同じです。市場出荷はせず、予定収入が見込める契約取引を行っています。契約取引は、当事者が当初の約束を守る必要があります。しかしながら、天候に極めて大きく左右されるのが野菜生産。結果的に、見込んだ収入が得られない事態も発生します。そのような状況を避けるため、森ファームでは、昨年秋から、機構が実施する契約野菜収入確保モデル事業(いわゆる「PQ事業」)を活用し、一定の成果を上げています。
里山の森ぽっぽの野菜直売ほ場
なお、「里山の森ぽっぽ」では、野菜の販売も行っていますが、その野菜は基本的にお客様自身が収穫することになっています。最近は利便性を売りにするお店が多くありますが、「不便性をテーマにしているんです。それがきっとお客様にもいいんです。」と森社長は言っています。
お客さん自ら収穫する野菜のメニュー
さらには、新たな取り組みとして、自社のそば粉を使ったそば等を提供するレストランの開設を予定とのこと。
「採れたよ。おいしそうな、にんじん。(^o^)」
今後も大規模な集客を見込んだ運営を目指さず、不便性をテーマに、「来る人には楽しみを、帰る人には喜びを」の精神の下、顧客が満足できる活動を展開していきたいとのことでした。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196