【alicセミナー】
最終更新日:2013年6月28日
昨年11月22日に開催したalicセミナーでは、世界の飼料穀物事情と題して、主要飼料穀物輸出国であるアルゼンチン、豪州、ウクライナの3ヵ国について、最近のトウモロコシ、小麦などをめぐる情勢等を報告しました。
アルゼンチンのトウモロコシ生産動向に注視
2012/13年度のアルゼンチンのトウモロコシ生産量は、おおよそ2400万トンから2500万トン(前年度2096万トン)の見通しです。穀物生産に適した未利用土地が多く、増産の潜在能力は非常に高いと考えられます。
トウモロコシ消費量はここ数年、800万トン前後で推移しています。牛肉価格高騰などにより国内の鶏肉需要が増加したことに伴い、飼料用の国内需要が伸びています。
アルゼンチン政府はトウモロコシの国内需要分を確保し、余剰分を輸出に回す輸出管理政策を実施しています。2012/13年度の輸出許可数量は1500万トンで、天候が良好なら300万トンの追加も期待されます。輸出先はコロンビア、アルジェリア、韓国がトップ3で、特に韓国は2012年に米国産を減らし、アルゼンチン産の輸入量が急増しました。
政府による輸出税や輸出登録制度などの輸出管理政策により、輸出に不安定さや不確実さが常に存在することが課題ですが、日本が調達先の多角化を図るためには、トウモロコシの生産動向を注視する必要があるでしょう。
豪州は小麦・大麦が減産、ソルガムは増産
豪州は日本に対する飼料用小麦、飼料用大麦、ソルガムの第1位の輸出国となっています。豪州農業資源経済科学局(ABARES)の9月時点の予測では、現在収穫中の2012/13年度の小麦・大麦は、高温乾燥の影響により、小麦生産量が2254万トン(前年度比23・6%減)、大麦生産量も696万トン(前年度比18・8%減)に減少する見込みです。現在収穫中の小麦や大麦ではタンパク含有量の低下が報告されており、食用の中でもタンパク含有量が低いグレードへの仕向けが増加しています。今後、この低いグレードの食用小麦が豪州国内の畜産業やアジア市場に仕向けられる可能性があります。冬作物の小麦・大麦に対して、現在は、種が行われている夏作物のソルガムは生産時期と産地が異なるため、生産量は78 万トン(前年度比23・7%増)に増加する見込みです。
ウクライナはトウモロコシ生産・輸出ともに大きく拡大
ウクライナのトウモロコシ生産は、ソ連崩壊後、大きく落ち込みましたが、近年の回復を背景に、世界第3位のトウモロコシ輸出国となり、2012年に入って日本向け輸出も活発化しています。
トウモロコシ増産の要因は、(1)収穫面積の拡大、(2)施肥量の増加、(3)輸入種子の増加などです。
収穫面積の拡大については、小麦と比べ生産が安定していること、輸出向けが中心で収益性がよいことなどから、生産者のトウモロコシへの作付意欲の高まりが要因です。
施肥量の増加については、収穫したトウモロコシを担保にした短期的資金の貸付の普及で生産者が次年度の作付に向けた肥料購入を容易にできていることが背景にあります。
輸入種子の増加については、生産者が高い生産量を確保するため、外国産の高品質種子の需要増が背景にあります。輸出需要が高いことから、その傾向はさらに強まっています。
さらに、農業生産を活性化する内容の税制優遇も、増産に大きく寄与しているといえます。
最近、ウクライナでトウモロコシ増産を背景とした輸出拡大が目立ってきました。輸出拡大の要因は、家畜の飼養頭数の減少と価格優位性です。
ソ連崩壊後、畜産物のロシア向け輸出が大きく減少し、家畜の飼養頭数も激減しました。この影響で国内の飼料穀物需要は縮小しました。内需の弱さが、輸出志向へシフトさせています。
価格優位性を日本の貿易統計でみます。2012年(1〜9月)のウクライナ産の平均輸入単価(CIF)はトンあたり24,694円と、米国産(26,417円)やアルゼンチン産(25,117円)に比べ安価です。
ウクライナは、価格優位性を活かした外需の強さにけん引され、トウモロコシ輸出国として大きく変貌しつつあります。米国産の価格が高水準で推移する中、国際市場でウクライナ産トウモロコシのプレゼンスが強くなってきました。
中国は、ウクライナの潜在性に目をつけています。中国は高度経済成長の高まりを背景に食肉需要が急速に拡大しています。飼料としてのトウモロコシが不足し、輸入が増加する傾向にあります。9割以上を占める米国産の調達依存度を下げ、ウクライナからの調達に向けた動きが見えてきました。
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