レポート
最終更新日:2013年7月2日
ニュージーランドの牛肉生産事情
はじめに
ニュージーランドは世界第5位(シェア6.4%)の牛肉輸出国です。牛肉生産量は世界の1%を占めるに過ぎませんが、人口が少ないため、生産される牛肉の8割がアメリカや韓国、日本など海外に輸出されています。
日本の牛肉輸入をみると、ニュージーランド産が全体にしめる割合は6%ほどで、オーストラリア(同 62 %)、アメリカ(同 26 %)に続いて、第3位となっています。
畜産はニュージーランドの基幹産業
ニュージーランドは、日本の7割ほどの国土面積ですが、温暖な気候に恵まれ、国土の約4分の1を占める山地をうまく活用し、国土の4割以上が肉牛や乳牛、羊の放牧地となっています。飼養頭数は、肉牛が370万頭、乳牛が650万頭、羊が3120万頭です。
ニュージーランドの総輸出額(FOB)に占める農産物の割合は約6割で、そのうち牛肉は、牛乳・乳製品、羊肉・羊毛に次ぐ輸出額で、外貨を獲得する上で重要な役割を担っています。
放牧主体、複合経営による肉牛生産
ニュージーランドの肉牛生産の特徴は、(1)放牧主体、(2)羊との複合経営です。これは、牧草が豊富なニュージーランドの環境に根差したものであると同時に、輸出に依存する産業構造によるものでもあります。
肉牛は一年中、牧草で飼養されます。補助飼料として、ナタネやケールといったアブラナ科飼料作物のほか、牧草が減少する冬期には、夏の間に生産された乾牧草やサイレージなども与えられますが、穀物はほとんど与えられません。飼料費をかけず、低コストで肉牛を生産することによって、輸出市場での価格競争力を確保しているのです。
また、肉牛農家の大半は、羊との複合経営ですが、これは、牛肉の国際価格が下落したときにも、羊肉・羊毛を生産することで、収益の安定化を図っているのです。 羊との複合経営は、牧草地を良好に保つという、2次的な役割もあります。羊は、牛よりも幅広い食性を持ち、ひとところに留まらず傾斜地などでも採食します。
小牧地に分けた牧場に牛と羊を交互に放牧することで、草地の利用効率を高め、また、牧草地の管理にも役立っています。
平坦な放牧地で牧草を食べる肉牛
牛肉生産と酪農の関わり
酪農がさかんなニュージーランドでは、オーストラリアなど他の牛肉輸出国と比べて、牛肉生産と酪農の関わりが深いということも特徴の一つといえます。
肉牛として飼養されている中には、乳用種であるフリーシアンが2割を占めています。また、酪農家から出荷・と畜される廃用牛は、乳牛の飼養頭数の 15 〜 20 %であり、成牛のと畜頭数の約4割を占めています。
このように、酪農と密接に結びついている牛肉生産ですが、最近では、酪農が拡大する一方で、肉牛の飼養頭数が減少しています。近年の国際乳製品価格の上昇や、中国などからの乳製品需要の高まりから、酪農と肉牛・羊の収益を比較すると、2001年以降、おおむね酪農が上回っています。こうしたことから、牧草地の利用は肉牛・羊から乳牛へと変化してきています。
今後も、中国などの乳製品の需要はさらに拡大すると見込まれ、肉牛の飼養頭数の増加はなかなか難しいようです。
羊が丘陵地にたたずむ様子はよくみられる光景
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