レポート
最終更新日:2013年7月3日
ドイツにおける豚肉生産の現状
はじめに
日本で暮らす人々にとって、ドイツは、ヨーロッパの国々の中でも特に馴染みの深い国の一つです。食品では、ビールやソーセージがよく知られていますが、畜産分野でみると、欧州で最大の豚肉生産国であり、かつ豚肉消費国でもあります。
ドイツの豚肉生産と消費の概要
2 0 1 1 年の豚肉生産量は559万8000トンと、EU 27 カ国の豚肉生産量の 25 %を占めています。EU全体では、豚肉の生産量は横ばい傾向にありますが、ドイツでは増加傾向にあります。
また、人口8200万人を有するドイツの豚肉消費量は、2009年で449万8000トンとなっており、欧州全体の 20 %以上を占め、EU最大の消費国となっています。(2009年の日本の豚肉消費量は、237万8000トン)
同国における主要な豚肉生産地は、北西部のニーダーザクセン州とノルトラインヴェストファーレン州、南部のバイエルン州の3州です。特に、北西部の2州は、そのなかでも限られた地域に養豚事業者が集中しています。
北西部の生産が多い理由には、この地域がドイツの主要な穀物生産地帯であることがあげられます。また、ハンブルク、オランダのロッテルダムなど大規模な港湾が近く、大豆かすをはじめとした輸入飼料穀物の輸送コストを抑えることができます。
さらに、オランダに隣接し、北部のデンマークも近いことから、両国で生産された子豚を搬入しやすいという優位性があります。
豚用飼料の状況
ドイツでは、養豚経営で利用される飼料原料のおよそ 60 %が経営内で自給生産され、残りの 40 %は飼料メーカーにより製造された配合飼料が給与されています。豚用飼料として栽培される主な穀物は、小麦と大麦であり、主要な生産地はドイツ北部です。
北部は暖流の影響により比較的温暖で湿潤な気候であるため、麦類に加え、トウモロコシの栽培も盛んで、生産された穀物は飼料原料に仕向けられています。なお、一般的に、ドイツで利用される豚用飼料の配合は、小麦、大麦、トウモロコシなどの穀物(約 70 %)と、タンパク質源としての大豆かす(約 20 %)で構成されています。
輸入に頼っている大豆かすの価格高騰が、現在のドイツ養豚に重くのしかかっています。
ドイツは生産地から直接あるいはオランダを経由して、大豆かすのほぼ全量を、南米から輸入しています。大豆かすの輸入は2001年以降に大きく増加しました。この背景にはBSEの影響により、動物性タンパク質の家畜飼料への利用が制限されたことが影響しています。動物性タンパク質の代替として植物性タンパク質が必要となり、加えて、当時は大豆かすの国際相場が現在と比較して安価でしたので、豚用飼料への利用が進み、現在の配合割合が構成されました。
しかし、2008年に大豆かすの国際価格が高騰して以降、その後も高止まり傾向にあり、養豚経営の収益性を悪化させる要因となっています。大豆かすの代替となるタンパク質源として、ヒマワリかす、ナタネかすなどが一部用いられていますが、大豆かすと比べて嗜好性が落ちることや、必須アミノ酸の含有バランスなど栄養成分上の問題があります。このため、輸入に依存する大豆かすを、他の飼料資源で完全に代替することは現状として困難になっています。
飼料の給与方法など
ドイツの養豚事業者の多くは、各経営で穀物を破砕するためのミルを所有し、破砕した穀物に水分を加えておかゆのような状態にして与えます。この、給餌方法はリキッドフィーディングシステムと呼ばれています。この方法の利点は、液状化させることで飼料の食い込みがよくなり、パンなどの食品残さなども柔軟に利用することができることです。現在、日本でも大規模な養豚農家で導入が進んでおり、肥育効率の上昇と、エコフィードなど多様な飼料資源を有効に活用できる点で、注目されています。
まとめ
ドイツと日本の養豚における大きな違いは、ドイツの養豚事業者は、(1)自ら飼料穀物を生産していること、(2)自家生産した飼料穀物と、大豆かすなどの購入飼料を各生産者が配合し、給餌していること、の2点です。
今回のドイツの調査を通じて見えてくることは、生産者自身が十分な飼料穀物を生産できることが、安定した経営の確立に寄与していること、また、経営者自身が飼料成分の配合や原料調達に工夫を凝らしていることです。
ドイツはEUの中央部に位置し、人・モノの動きが盛んです。こうした環境では、生産者が自ら工夫を施し、投資や経営判断を行うことが必要であり、経営レベルの取組みが重要であることを改めて感じました。
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