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【alicセミナー】インドネシアの牛肉生産をめぐる最近の状況

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最終更新日:2014年3月5日

調査情報部 伊藤 久美

 1月29日に開催したalicセミナーでは、インドネシアの牛肉生産をめぐる状況について、alic職員が実施した現地調査の結果を報告しました。

インドネシアの概況と食肉消費

 インドネシアは、赤道直下に位置する、人口世界第4 位(2億5千万人)の国です。GDP成長率は6.2%と高い水準を維持し、中間所得層や都市部の人口は増加傾向にあります。そのため、インドネシアの食肉消費は今後増加すると見込まれ、将来的には世界の食肉需給に影響を及ぼすと考えられます。人口の大半がイスラム教徒であるため、食肉消費は主に鶏肉、次いで牛肉であり、豚肉は限定的となっています。
 生体牛の輸入相手先はオーストラリアのみで、輸入牛肉についても主要な相手先です。オーストラリアは日本にとっても牛肉の主な輸入先であり、インドネシアの牛肉需給は日本の牛肉輸入に影響を与える可能性があるため、注視が必要です。
インドネシア地図
インドネシア地図

牛肉の供給体制

牛
 インドネシアの牛肉供給は、国産牛由来、輸入生体牛由来、輸入牛肉に分類されます。最も多いのが国産牛由来で、2011年には供給量の7割を占めています。国内の肉牛経営は、小規模農家、農家グループ、中規模農家、フィードロットと呼ばれる集約肥育場の4つに分類され、小規模農家と農家グループが飼養頭数の8割以上を占めます。

自給率向上プログラムと牛肉生産への影響

 インドネシア政府は、人口増加に伴い食料の確保が必要であるという観点から、2010年からの5カ年計画で牛肉を含む農畜産物の自給率向上プログラムを実施しています。
 2014年の牛肉自給率の目標は 90 %と設定されました。
 さらに政府は、これを達成するために2014年の国内生産量の目標を 50 万7千tとし、2012年以降、生体牛と牛肉の輸入を段階的に減少させていくための輸入規制を行いました。しかし、これにより国内で牛肉が不足し、小売価格と肉牛の販売価格が大幅に上昇したため、国産牛のと畜が増加し、2013年の牛飼養頭数は輸入規制を行なう前に比べて 15 %減となりました。牛飼養頭数を早急に回復させるためには国産牛の保留が不可欠です。
飼養頭数の推移
 一方、毎年、増加傾向にある牛肉需要に対応し、かつ国内の牛肉価格を安定させるには、生体牛及び牛肉の輸入増加が必要となります。このため、政府は2013年9月以降、輸入枠を拡大し、また、国内牛肉価格の変動に合わせて輸入量を調整できる仕組みを導入するなどの方針転換を行ないました。
 生体牛の輸入頭数は、輸入が規制された2012年に 28 万3千頭であったのが、2014年には 75 万頭に増加する見込みとなっており、当面は生体牛と牛肉の輸入が増加するものと考えられます。
供給量と目標

国産牛肉増産に向けた取り組み

 こうした状況から、2014年の牛肉自給率の目標達成は困難となったものの、牛肉自給率向上プログラムの一環として行われる国産牛肉増産に向けた取り組みは継続されています。この一端を取り上げると、政府は、肉牛経営の規模拡大を目指し、農家グループでの生産の推進を図るため、農家グループに肥育もと牛、医薬品、資料の現物支給などを行なっています。そのほかにはフィードロット経営から小規模農家への繁殖雌牛の無料貸出しや飼育管理の指導が行われています。これらの取り組みの中には、国産牛の増頭に一定の効を奏するものもあります。また、現在、地方の肉牛の産地に冷凍牛肉製造施設の整備が進められ、消費地であるジャカルタへの牛肉供給体制が整えられています。
 こうした取り組みは今後、新たな流通経路の開拓や国内生産の拡大につながっていくものと期待されます。
牛・連投設備

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