【業務関連情報】「安全・安心」 で 「物価の優等生」 である鶏卵の生産現場から
最終更新日:2016年5月11日
現在、日本では、鶏卵の年間1人当たり消費量が329個とメキシコ、マレーシアに次ぎ世界第3位の鶏卵大消費国です。計算上では1日につき約1個の鶏卵が食べられていることになります。お菓子、マヨネーズなどの原材料として使われているほか、和食・洋食に関係なく日々の食卓でさまざまな料理に利用され、日本の食卓には欠くことのできない重要な食料品のひとつに位置付けられています。鶏卵は、栄養価が高く、良質なタンパク質を含んでいることは、よく知られているところです。また「物価の優等生」と呼ばれているように、長期的な価格の推移を見ると、他の食料品と比べて変動が少なく、上昇率も低いことも大きな特徴です。その他、鶏卵は自給率が95%と他の畜産物と異なり、国産比率が高い品目であることも特筆すべき点です。
生食を前提とした鶏卵で求められる高い衛生管理
日本では、卵かけご飯やすき焼きなどで生卵を食べますが、これは世界的には珍しい食べ方です。生卵を食べられるということは、日本の鶏卵の衛生水準と、その品質に対しての信頼性が極めて高いことを意味しています。鶏卵の生産現場では、普段消費者の皆さんの目には留まりにくい部分でも、卵を産む採卵鶏の健康はもちろんのこと、健康な鶏から産まれた卵を選別するなどの品質管理や卵が食卓に届くまで鮮度が落ちないようにする衛生管理などさまざまな取り組みが行われています。また、生卵を食べる消費者からは、卵の新鮮さや安全・安心、産地などの生産履歴情報を求める声があがるようになったことから、生産現場ではそのニーズに対応するための取り組みも行っています。
種鶏の育成からパッキングまでの一貫生産体制
平成26年の採卵鶏の飼育農家1戸当たりの飼養羽数は、5万2200羽と5年間で約16%も増加しており、採卵鶏の飼養規模は大規模化が進んでいます(図)。群馬県にある株式会社トマルは、このような大規模経営のひとつで、安全・安心な卵を生産するために、採卵用雛の親鶏(種鶏)の雛の導入、育成から自社で行うなど先進的な取り組みを行っています。
株式会社トマルの種鶏の産卵鶏舎では、雌雄の種鶏を10:1で混飼して、自然交配をすることで、種卵(受精卵)が生産されます。種卵は、孵卵(ふらん)場で21日間孵化(ふか)させた後、羽毛の発育や色の違いによって雌雄鑑別を行い、健康な雌の雛が育ち(育雛(いくすう))、卵を産む大きさまで育てる(育成)農場に送り出されます。育雛・育成農場では120日程度飼育された後、採卵農場に移動し、産卵が開始されます。なお、鶏を飼育している農場は、給餌、給水、温度、湿度、換気、照明などが自動コントロールされ、衛生的な環境が保たれている無窓型(ウィンドウレス)の鶏舎となっており、野鳥の侵入の防止や、外部環境(温度、日長時間など)に影響されないようにコントロールされています。また、衛生管理として農場に入る際には、洗浄、消毒、シャワー、全ての着衣の着替えなどを実施しています。
採卵農場で産卵された卵は、コンベアによって集卵施設に搬送され、洗卵後、ヒビや汚れがあるもの、規格に合わないものを自動検知機によって取り除くなど選別をしてから、パッキングセンターに運ばれます。パッキングセンターでは、パック包装を行い、量販店などへ配送されます。生食用殻付卵を扱う施設では、施設内の保管庫などは徹底した温度管理を行うほか、機械の洗浄消毒なども厳重に行っています。
このように種鶏の育成から採卵、選別、包装などを自社で一貫生産することにより、消費者が求める卵の生産履歴を種鶏まで遡ることができるシステムを構築しています。さらに、HACCPの手法の導入や食品安全マネジメントシステムのISO22000を取得し、高いレベルでの食品安全に取り組んでいます。
このような先進的な取り組みをはじめ、日本の鶏卵生産現場では、高い品質管理と衛生管理基準の下、消費者の皆さんに安全・安心で手頃な価格の卵が供給されるよう日々努力が重ねられています。
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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