【レポート】台湾のレタス生産と輸出動向
最終更新日:2017年7月5日
日本では、年間50万 t 程度のレタスが収穫・出荷されており、私たちが購入し家庭で食べるレタスは、ほぼ国産です。しかし、ハンバーガーにはさむレタスなど、加工・業務用の一部には輸入レタスが使われています。日本国内に出回っているレタスに占める輸入レタスの割合は少ないものの、その輸入量の7割を台湾産が占めています。沖縄の南西に位置する台湾は、温暖な気候とその近さから、日本にとって野菜の主な輸入先のひとつです。そこで今回は、台湾のレタス生産や輸出に関する動向を紹介します。
温暖な気候を生かして冬場に生産
台湾は、九州よりやや小さく、全土が亜熱帯性気候または熱帯性気候です。レタスの主産地は、台中市のやや南の雲林県ですが、同県は、気候が温暖な上、大きな河川(濁水渓)が流れているため、米やさまざまな野菜・果物が生産される、台湾有数の農業地帯です。
近年、台湾のレタスの作付面積と収穫量は、おおむね増加傾向で推移しています。2013年に減少したものの、その後は安定的な推移となっており、過去15年間で見れば生産は拡大傾向です。
レタスは、暑さの厳しい夏場を避け、日本と比べて温暖な秋から冬にかけて、年に2回または3回生産されています。
生産の主な担い手は、小規模な生産者が共同で組織した合作社(組合)です。一般に、病害虫や残留農薬への対策といった重要な栽培管理は、合作社によって行われ、苗の植え付けや水やりなどの日々の細かな作業は、傘下の各生産者によって行われています。また、日本に輸出する経営体は、農場から日本の輸入業者の元へ届くまで、全行程を低温状態で保つ物流体系を確立しているところが一般的です。
日本向けを中心に輸出を拡大
レタス輸出量の8割近くは日本向けとなっており、日本国内では寒さが厳しく出荷が減少する冬場のファストフードチェーン向けが中心です。
実はレタス輸出は、1990年代まで一般的ではありませんでした。2000年前後、冬場の生産過剰によるキャベツの価格暴落が課題となり、政府がキャベツの代わりに、アメリカからレタスの生産技術を導入したのが、レタス輸出本格化のきっかけとされています。
同じ頃、日本では、国産レタスは小売向けに出荷される一方、主にアメリカ産レタスが、ファストフードチェーンなどの加工・業務用に輸入されていましたが、輸送期間の長さが課題となっていました。日本の業界関係者は、代わりの輸入先を探す中で、台湾産レタスを“発見”したのです。いわば、輸出を拡大したい台湾側と輸入先を開拓したい日本側のニーズが一致したといえるでしょう。緑色が濃いアメリカの品種が中心の台湾産レタスは、巻きがしっかりして歩留りが良く、日本の業界関係者からも高く評価されたため、順調に日本向け輸出は拡大し、現在に至っています。
今後の拡大には、さまざまな課題も
今後のレタスの生産・輸出拡大には、課題も多いと考えられています。具体的には、レタス生産は、輸出を重 視する一部の生産者に限られていること、レタスは年間生産ではないため、所得の安定を求める若年層が参入しにくいこと、雲林県に次ぐ主産地が存在しないことなどです。
一方、ここ15年、急増した日本向けも、最近市場は飽和状態に近いとみられています。長期的にみた場合、日本向けの安定的な数量を確保しつつ、近隣の東南アジア諸国など他国への輸出を増やすことができるかが、重要になってくると予想されます。
(調査情報部 根本 悠)
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