砂糖の原料は、暖かい地域ではサトウキビ、涼しい地域ではてん菜ですが、日本のてん菜生産地である北海道と緯度が近いポーランドでは、てん菜から砂糖を生産し、EUで第3位の生産国となっています。EUでは、2017年9月末に約半世紀にわたって行われてきた農業政策が大きく変わりました。これに対応するための取り組みを進めている、ポーランドの砂糖産業について紹介します。
ポ ーランドでは、2016/17年度(2016年10月〜2017年9月)は、22万haの面積で、1390万tのてん菜が生産されました。これは北海道のてん菜と比べて、それぞれ4倍に相当します。一方、生産者戸数は3万4000戸と北海道の5倍で、1戸当たりの栽培面積は6haと北海道の8haよりも小さな経営が多いのが特徴です。
ポーランドでは、加盟するEUにおける共通農業政策(CAP)に基づいた砂糖関連政策が実施されています。これにより毎年度、各加盟国に砂糖の生産量が割り当てられ、各国はその割当数量に基づきてん菜および砂糖を生産し、砂糖の輸出量にも上限が決められていました。しかし、2017年のCAPの変更により、基本的にこのような規制はなくなり、より自由な市場競争の下で、砂糖を生産・販売することが可能になりました。
ポーランドの製糖企業は、社会主義時代には全てが国営でしたが、90年代後半から民営化と外資の参入が進み、現在は、国内資本の企業は1社のみで、残りはドイツ資本の企業となっています。しかし、1工場当たりの生産量は、EU第2位の砂糖生産国であるドイツの6割程度にとどまっています。このため、CAPの変更を機に、工場への設備投資など砂糖産業の競争力強化に向けた取り組みが進められています。
ポーランドでは、砂糖消費量の7割が業務用に仕向けられており、その25%程度が焼き菓子やチョコレートなどの菓子類向けです。菓子類は、主にEU域内のドイツやイギリス、チェコなどに輸出され、輸出量は、長年にわたって増加傾向で推移しています。菓子類の輸出が拡大すれば、その原料である砂糖の需要も生まれるため、砂糖産業へ利益をもたらします。また、菓子産業も、今回の規制の緩和によって国内の砂糖生産量が増加すれば、低価格で競争力の高い商品の生産や輸出が可能になるとして、期待されています。
調査情報部 (現 総務部総務課付) 丸 吉 裕 子