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【第一線から】クリームトップの熟成式ヨーグルトで夢をつかんだ 〜オオヤブデイリーファーム〜

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最終更新日:2019年7月3日

オオヤブデイリーファーム代表の大薮裕介さん。牧場の看板は裕介さんが中学生の時にデザインしたものです。
オオヤブデイリーファーム代表の大薮裕介さん。牧場の看板は裕介さんが中学生の時にデザインしたものです。

酪農家になるきっかけ

美星牧場全景

 熊本市の北東部に隣接する熊本県合志(こうし)市にある「オオヤブデイリーファーム」代表の大薮裕介(おおやぶゆうすけ)さんは、18年前に家業の酪農に就きました。小さい頃から絵を描くのが好きだった裕介さんは、コンクールで賞を取ることもあり、中学生の時には、父親である正勝(まさかつ)さんの牧場の看板をデザインし、この看板は27年経った今でも牧場の顔となっています。そんな裕介さんは大学卒業後、デザイン系の道に進もうと考えていましたが、大学4年の時に正勝さんに勧められて参加したアメリカの酪農を視察するツアーで、毎年海外へ旅行をしているという同行者の酪農家に出会い、「酪農家は休みのない仕事だと思っていたが、マネジメントを上手くすれば、好きな時に海外旅行もできる自由な職業である」と考えを改め、家業の酪農に就く決心をしました。
 

酪農家の厳しい現実と、そこからの脱却

 しかし、就農後、生乳の需給緩和による生産の抑制や、口蹄疫の発生など、酪農家の厳しい現実などを幾多も経験します。手取りが月5万円という時もありました。これらの苦難の中で裕介さんは、「外的要因に左右されない強い経営」を模索しました。外的要因の影響を受けずに、愛情を込めて育てた牛の乳を消費者に味わってもらうために、自分で乳製品を作ろうと考え、ヨーグルトの製造を始めました。
 まず、熊本県の技術支援機関で2年間ヨーグルト製造技術を学び、自分の給料で返還できる額を制度融資から借りて牧場の敷地内に小さな乳製品加工施設を建てました。朝は乳搾り、昼は畑作業、夕方の乳搾りが終わってからヨーグルトを作り始め、深夜過ぎに片付けを終えて就寝、翌朝4時には起床して発酵状態をチェックして朝の乳搾りが始まる、というハードな日々を過ごしました。また、大手企業の経営研究会などに参加して経営やマーケティングも学びました。普通のヨーグルトを作っても消費者の心は掴めないため、オリジナル性のある、消費者に選ばれるものを模索しました。
 原料は、乳脂肪が豊富なジャージー牛の生乳を使用し、乳酸菌は多数の種類を試し、発酵のさせ方も工夫し、試行錯誤を繰り返して納得のいく味を見つけました。裕介さんのヨーグルトの特徴は、素材の持ち味を活かすことにこだわり、濃厚なクリームが上層に形成される「2層式」であることと、出来たては良質な素材の味わいを楽しめますが、乳酸菌が活きているので次第に酸味と香りが出てくる「熟成式」であることです。甘味料には爽やかな自然の甘さの甜菜糖(てんさいとう)を選び、容器にもこだわって、ロゴやマークは持ち前のセンスで自らデザインしました。
 

1線1-4

オオヤブデイリーファームの飛躍

 どんなに良いものを作っても、その存在を知られなければ売れないことから、積極的に東京などの展示会に出展しました。時間、費用とも負担は少なくはありませんでしたが、自分のヨーグルトを知ってもらうための投資であると考えました。その取り組みが実り、現在では、百貨店や高級食材店との取引や、ネット販売などに販路を広げ、昨年度は7年前にヨーグルトを製造・販売し始めた初年度300万円の25倍にまで売り上げを拡大しました。また、今年の3月には、個性あるヨーグルトの製造と販路拡大に向けた取組みなど評価され、農林水産省の6次産業化優良事例表彰において農林水産大臣賞を受賞しました。
 裕介さんが就農した18年前、親子3人で従事していた牧場は、現在は15名のスタッフが働いています。「スタッフにはこの牧場で働いて良かったと思ってもらいたい」という裕介さんは、人材育成にも力を入れており、スタッフをイタリアでの2週間の乳製品研修に派遣したりもしています。
 

オオヤブデイリーファームの目指すもの

ハウス

 就農当初、酪農家になって自由に海外旅行をしたいと考えた裕介さんのその想いは叶い、今では毎年視察や商談を兼ねた海外旅行を実現しています。「人生と仕事が同一線上にある」と話される裕介さんは、海外の酪農家を訪ねたり、世界中のヨーグルトを食べ歩くなど、趣味と仕事の境界線がなくなり、ヨーグルトを作り始めた7年前には想像もできなかった現実に、夢をつかんでいるようだと話されます。
 搾った乳を最高の形に仕上げてお客様に届けたい。そんな想いが、多くの関係者に支えられて今の牧場があると裕介さんは話されます。牧場の存在価値を高めるための裕介さんの追求はこれからも続きます。
(酪農乳業部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196