【レポート】地理的表示(GI)で保護されたEU産の伝統的なチーズについて
最終更新日:2019年7月3日
EUのチーズの生産・輸出の動向
EUは、生乳生産量で全世界の約2割を占める大産地です。チーズの生産量は、年間1000万tを超え、第2位の米国の2倍近くを生産しています。
2018年のEUのチーズ生産量は1062万tとなり、生乳生産量が増加傾向で推移する中、チーズの生産量も増加傾向で推移しています。また、EU産チーズは、種類の豊富さやブランド力などにより輸出量を拡大させており、2018年の輸出量は83万tとなりました。主な輸出先は、米国(輸出量に占めるシェア16.0%)、日本(同12.8%)、スイス(同7.4%)などとなっています。EUで生産されるチーズの9割以上がEU域内で消費されており、各チーズメーカーは、EU域内市場を最も重要な市場と捉えているものの、EUはすでに成熟市場でもあることから、今後の販路として、中国、日本、韓国などのアジア諸国、北アフリカ、中東、南米といったEU域外での市場拡大を目指すとしています。
地理的表示(GI)制度で保護されるチーズ
EU産チーズが評価される点にその特性や品質が挙げられますが、それらがGI(Geographical Indication)制度により保証されているチーズがGIチーズです。
GI制度は、地域特有の伝統的生産方法や生産地の自然的な要因によって、他には無い特性、高い品質、評価を獲得しているものについて、地理的表示(知的財産)を保護し、生産者と消費者の利益を守るもので、原産地呼称保護(PDO)と地理的表示保護(PGI)の2種類があります(表2参照)。
2010年時点のデータによると、EU産チーズのうち約1割がGIチーズであるとも言われています。世界中で作られている「ゴーダチーズ」は一般的なチーズの名称ですが、例えば、オランダで作られるゴーダチーズの中には、GI登録された「ゴーダ・ホラント」があります。EUでは、すでに3000を超える農林水産物・食品・飲料が、GI制度により保護されています。
GI制度には、原産地の伝統や文化、地理に深く根付いた製品を保護し、地域社会に文化的・経済的な価値を創出し、かつ消費者に信頼性の高い情報を伝達できるといったメリットがあります。生産者には、透明性の高いシステムに基づき、EU加盟諸国により保護された名称を使用する権利が与えられます。消費者は、生乳生産からチーズ製造まで、仕様書に即し徹底した管理が行われ、品質が保証されたものを購入できます。また、その地域以外では生産することができないため、酪農業からチーズ製造業、加工業まで幅広い分野での雇用機会の創出や地域観光につながることが期待されています。
生産量、輸出量ともに拡大するイタリア産GIチーズ
イタリアのチーズの生産量は増加傾向で推移しており、2017年は126万t(対前年比2.3%増)となりました。このうち4割を超える54万t(同1.6%増)がGIチーズのPDOチーズとなっています。PDOチーズの中で生産量が多いのはハード系のグラナ・パダーノ(約19万t)やパルミジャーノ・レッジャーノ(約15万t)、次いでブルーチーズのゴルゴンゾーラ(約6万t)です。輸出量は、いずれも増加傾向にあり、2017年は、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノは生産量それぞれの26 %を、ゴルゴンゾーラについては、同35 %をEU域内・域外へ輸出しています。
日EU・EPAによる地理的表示保護
日EU・EPA(経済連携協定)の発効により、日本でEUのGIチーズが保護されることになりました。具体的には、EU産の26産品のGIチーズについては、産地・品質基準・生産方法などについて記載されたGIチーズの明細書(仕様書)に沿わない産品は、日本国内でのGI表示が禁止されることになります。日EU・EPAでは、EU側71産品(うちチーズ26産品)、日本側48産品の食品GIを相互に保護することに合意しています。
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