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によるブランド化

【REPORT】イタリアのチーズ生産と原産地呼称保護(PDO)
によるブランド化

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最終更新日:2024年2月5日

広報誌「alic」2024年2月号
 イタリアのスーパーマーケットをのぞくと、とても豊富な種類のチーズが並んでいます。同国のチーズとして日本でもなじみのあるパルミジャーノ・レッジャーノやゴルゴンゾーラを始め、チーズ製造が盛んなフランスやオランダ、ドイツなどEU産のチーズも多く見られます。EUにおいて、チーズは、歴史が古く、人々の食生活に欠かせない食品の一つです。

スーパーでのチーズ販売の様子。国産・輸入問わず量と種類はとても豊富です。
スーパーでのチーズ販売の様子。国産・輸入問わず量と種類はとても豊富です。

PDOを通じたチーズのブランド化

イタリアの生乳生産地域

熟成のための保管倉庫に並ぶパルミジャーノ・レッジャーノ。かつて手作業で行っていた約40kgのチーズの反転も中央の機械により自動化。
熟成のための保管倉庫に並ぶパルミジャーノ・
レッジャーノ。かつて手作業で行っていた約40kgの
チーズの反転も中央の機械により自動化。

コンソーシアムによる品質検査に合格した製品への刻印(中央)と製造番号(上部)や製造年月(下部)
コンソーシアムによる品質検査に合格した製品への刻印
(中央)と製造番号(上部)や製造年月(下部)

 EUの「地理的表示(GI)制度(注)」には、原料の生産を含めた生産工程(生産、加工、調製)のすべてをその地域で行っている製品に認証される「原産地呼称保護(PDO)」があります。
 イタリアは、PDO製品の数が最も多い国です。PDOに認定されるということは、その製品がその地域のものであるということだけでなく、加工・調製も決められた(管理された)過程を踏んでいることが保証されるということです。例えば、同国のチーズの王様と呼ばれるパルミジャーノ・レッジャーノも、PDOチーズの一つです。北部のエミリア・ロマーニャ州とロンバルディア州の一部のみで生産され、中世にまでさかのぼる製造方法を今でも受け継いでいます。
 PDOは製品のブランド化となり、より付加価値を高めることにつながります。現地の方は、「イタリア人は国産、さらには地元産を好む傾向があり、PDOのラベルが貼ってあったら、地元産であり、かつ品質の保証されたものだからとそちらを購入することが多い」と話します。
 PDOチーズは、コンソーシアムと呼ばれる管理組合により、ブランドが管理されています。100年の歴史を持つパルミジャーノ・レッジャーノ・コンソーシアムは、生産者などからの資金を基に、品質保証、PDOの管理と維持を通じたブランドの保護や付加価値を高めることで、市場開拓や輸出促進を行っています。

注:その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因・環境の中で長年育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度。

地域一体となった持続可能なチーズ生産

 PDOチーズの原料となる生乳を生産する酪農家が受け取る乳価(単価)は、通常の乳価より高く設定されています。その結果、イタリアの平均乳価は、おおむねEU平均を上回っています。これは、同国で生産された生乳の約半分が付加価値の高いPDOほかGIチーズに仕向けられているからです。
 生乳を出荷する酪農家は、PDOチーズ生産のため、地域内で収穫された飼料を牛に与えるなど伝統的な方法を守る一方で、搾乳ロボットなど最新の機械を導入しているところも多く見られます。また、機械化により乳牛の各種データ処理などの若者や女性を引き付ける業務が増え、地域に新たな雇用も生まれています。あるチーズ製造業者は、地域に根差したPDOチーズは長い年月をかけてその価値が高められており、生産地域すべての人の共同作品であると述べていました。

首輪のタグに記録された情報を通じて、牛1頭1頭を管理します。搾乳ロボットも、このタグの情報で自動的に牛1頭1頭の乳量をデータ化します。
首輪のタグに記録された情報を通じて、牛1頭1頭を管理します。
搾乳ロボットも、このタグの情報で自動的に牛1頭1頭の乳量をデータ化します。

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196