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【alicセミナー】豪州における近年の飼料穀物需給動向と見通し

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最終更新日:2024年5月7日

広報webマガジン「alic」2024年5月号
 alicは2024年3月1日(金)〜29日(金)、(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)シドニー事務所の赤松大暢氏によるalicセミナー「豪州における近年の飼料穀物需給動向と見通し」を、alicチャンネル(YouTube)で配信しましたので、その概要をご案内します。

1 豪州の穀物をめぐる情勢

<飼料用大麦の圃場 (写真提供:インターグレイン社)>
<飼料用大麦の圃場 (写真提供:インターグレイン社)>

(1)生産
 豪州では、飼料用穀物として主に大麦と小麦が生産され、世界の穀物生産量のうち、豪州の大麦は全体の約8%、小麦は約4%を占める主要穀物生産国です。
 2018〜19年は大規模な干ばつにより穀物生産量は減少しましたが、2020年から3年連続でラニーニャ現象※が発生し、近年は適度な降雨により豊作が続いています。

※ 豪州の穀物生産に影響を及ぼす天候要因として、(1)主に秋から春(5〜11月ごろ)にかけて、北部、東部、南部を中心に干ばつを引き起こす「エルニーニョ現象」、(2)主に秋から初夏(5〜12月ごろ)にかけて、同地域を中心に豪雨や低温を引き起こす「ラニーニャ現象」のほか、(3)主に秋から初夏(5〜12月)にかけて、西部と南部を中心に干ばつを引き起こす「インド洋ダイポール現象」の3つが挙げられます。

<穀物輸出ターミナル(豪州)>
<穀物輸出ターミナル(豪州)>

(2)輸出
 豪州産の穀物は、その多くが輸出に仕向けられており、世界の穀物輸出量のうち、豪州の大麦は全体の約 21%、小麦は約11%をそれぞれ占めるなど、主要穀物輸出国でもあります。日本にとっても、輸入する飼料用穀物のうち、大麦と小麦は豪州産が大部分を占めるなど、同国は重要な輸入先です。最近では、ウクライナ情勢などにより世界的な穀物供給がひっ迫し、国際相場が上昇する中で、豪州産穀物への需要が高まりました。他方で、豪州では、内陸部で生産された穀物を港に運ぶための貨車やトラックなどの輸送車両が限られるなどといった、同国内の輸送体制のぜい弱性が輸出拡大の制約となっています。また、同国は飼料生産に必要な肥料のほとんどを海外に依存する中で、近年の肥料の輸入価格の上昇が、穀物生産の課題となっています。
 豪州産大麦の主要輸出先であった中国向けについては、2020年5月、中国が豪州産大麦に対して80.5%の追加関税を課したことで、それ以降、輸出は事実上停止していました。しかし、その後の両国の関係改善により、2023年8月にこの関税が撤廃され、同年9月以降は中国向けが豪州の大麦輸出量全体の約9割を占めています。豪州の穀物業界は、今後も中国が主要輸出先になると見通す一方で、中国向け輸出停止中に開拓したサウジアラビアやメキシコなどの新規輸出先との関係維持も重要との見解を示しています。また、アジア圏は人口増加や世帯収入の増加などを背景に、畜産物の消費拡大が見込まれることから、今後の輸出先としてターゲットの1つに据えています。

2 今後の見通し

 広大な国土を有する豪州の穀物の生産・輸出動向については、引き続き気象状況に大きく左右される状況にあり、また、豪州国内の人口増による内需、消費・輸入大国である中国の需要、生産・輸出大国であるロシアの輸出など、それぞれの動向も注目されます。このため、日本は引き続き、飼料の国内生産の拡大を図りつつも、安定的な飼料確保の観点から、豪州をはじめとする世界的な穀物の需給動向について、注視していく必要があります。 
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 視聴者からは、「気象現象、土壌肥沃度、肥料、国内消費、サプライチェーンなど、生産と輸出との関係性について、多くの視点から解説されており、分かりやすかった」、「現地事情も含まれており有益だった。今後もこのような情報発信をキャッチし、業務に役立てたい」といった感想が寄せられました。
 alicでは皆さまのご意見を踏まえ、今後も情報提供に取り組んでまいります。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196